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ココロブルーに効く話 小山文彦

医療・健康・介護のコラム

【Track18】駅のホームから転落寸前、大切な人の声が聞こえた―うつ病の夫の危機を救った妻の口癖―

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 ある日の夕刻、私が妻と近所の横断歩道を渡ろうとした時のことです。突然、左折の車が、猛スピードで交差点に走り込んできて、妻の数歩先にいた私と危うく接触しそうになったのです。その瞬間の妻の驚きと怒りを込めた「うわああ!」という叫び声は、周辺に響き渡るほどのものでした。普段は何げない会話すら多いとも言えない私たち夫婦ですが、自分のパートナーに危機が迫った時の言葉や反応からは、守りや救いのような強い気持ちがうかがわれました。長年連れ添ってきた間柄ゆえ、なのかもしれません。

 今回は、うつ病を患った一人の男性と、その危機を救った奥様のエピソードです。

熱帯夜による睡眠不足が

【Track18】駅のホームから転落寸前、大切な人の声が聞こえた―うつ病の夫の危機を救った妻の口癖―

 タカシさん(58)は、食品製造業の部長職です。妻のアカリさん(50)との2人暮らしで、これまで大病を患うこともなく、夫婦間の大きな不和もありません。ただ、この数年、会社の営業成績が振るわず、社内の人間関係がギスギスとした雰囲気になってきたこともあり、働く喜びや仕事への意欲が乏しくなってきたのが、タカシさんにとって一番の悩みでした。

 その年の夏は記録的な猛暑で、9月に入っても熱帯夜が続いていました。

 暑がりのタカシさんは、毎日のように夜中に目が覚めてしまいます。隣の妻は、それに気づく素振りもなく、すやすやと眠っています。タカシさんは、その姿をうらやましく思いながら、連夜、睡眠不足を募らせていきました。

 次第に、タカシさんの元気のなさは、会社でも目立つようになりました。

 ある日の夕刻、エレベーターで乗り合わせた、会社のノダ保健師(女性)から、「部長、どこかお悪いのですか?」と声をかけられました。タカシさんは、自身の不調が、すでに周囲の目に悟られていることを感じながら、「さすが、ノダさん、わかりますか。最近、よく眠れなくてね」と返しました。

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小山 文彦(こやま・ふみひこ)

 東邦大学医療センター産業精神保健職場復帰支援センター長・教授。広島県出身。1991年、徳島大医学部卒。岡山大病院、独立行政法人労働者健康安全機構などを経て、2016年から現職。著書に「ココロブルーと脳ブルー 知っておきたい科学としてのメンタルヘルス」「精神科医の話の聴き方10のセオリー」などがある。19年にはシンガーソング・ライターとしてアルバム「Young At Heart!」を発表した。

 今年5月14日には、新型コロナの時代に伝えたいメッセージを込めた 新曲「リンゴの赤」 をリリースした。

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