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激しい腹痛や吐き気…命に関わる急性膵炎 アルコールと胆石が原因に

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  膵臓すいぞう は普段あまり意識しない臓器かもしれませんが、ひとたび急性膵炎にかかると、激しい腹痛や吐き気が起こり、命に関わります。飲酒や喫煙などの生活習慣も発症のリスクを高めます。(矢沢寛茂)

膵液を出す仕組みが崩れ

 膵臓は、胃の後ろにある長さ15センチほどの臓器です。主に二つの役割があります。一つは、食べ物を消化する膵液を十二指腸から出す。もう一つは、血液中の糖分の量を調整するインスリンなどのホルモンを分泌することです。

 急性膵炎は、膵液を出す仕組みが崩れて発症します。

 膵液は、胃から送られた食物から栄養分を取り出すため、でんぷんなどの炭水化物、たんぱく質、脂肪を分解する酵素を豊富に含みます。やや弱いアルカリ性で、1日1リットル弱が主膵管という管を通じて十二指腸に送り出されます。

 この主膵管が詰まるなどして、膵液があふれ出して炎症につながります。膵臓が腫れ上がり、多くの場合、激しい腹痛や吐き気、発熱などが起きます。

 国内では年間で10万人当たり約50人が発症し、近年はやや増加傾向にあると指摘されています。男性の患者が多く、女性の約2倍に上ります。

急性膵炎…アルコールと胆石 原因に

 主な原因は、アルコールと胆石です。男性では飲み過ぎ、女性では肥満による胆石が目立ちます。

 お酒を飲み過ぎると、膵臓の細胞が傷んで発症すると考えられます。さらに過剰に取り続けると慢性膵炎になる恐れもあります。脂っぽいものなど偏った食事や喫煙も危険を高めます。

 胆石は、胆のうで胆汁の成分が固まったものです。これが、十二指腸につながる胆管の出口で詰まることがあります。

 主膵管と胆管は、ともに十二指腸の乳頭という場所で開いており、胆石が膵管を圧迫して膵炎が起きることがあります。

 このほか、胆のうや膵臓の病気での内視鏡治療による合併症、脂質異常症、薬が原因になります。まれに、小さい膵臓がんに伴って発症することもあります。

生活習慣改善を

急性膵炎…アルコールと胆石 原因に

 血液検査、超音波、コンピューター断層撮影法(CT)などで膵炎と診断されれば、入院して絶食し、点滴を始めます。胆石が原因であれば内視鏡を使って除去します。

 重症化の兆候があれば、集中治療室(ICU)に移り、全身管理が必要です。重症化すると、膵臓のほか、周囲の細胞や組織を 壊死えし させ、死亡するリスクも高まります。壊死が起きると、症状が急速に悪化します。

 腸内の細菌が壊死した場所に感染すると、うみがたまった状態となり、激しい炎症が全身に広がって敗血症や多臓器不全の恐れが高まります。抗菌薬で改善しなければ、内視鏡で 膿瘍のうよう の治療を行います。

 治療にあたっては、飲酒や喫煙の状況、家族歴など原因につながる要素を確認し、生活習慣の改善を促します。胆石がある場合は、この病気の症状が和らいだ時点で、胆のうを摘出し、再発のリスクを下げます。

 北野病院(大阪市)消化器内科主任部長の 八隅やずみ 秀二郎さんは、「再発を防ぐためには、禁酒や体重のコントロールなど生活習慣を見直すように強く勧めています」と話しています。

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