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「接種後」の死者数が独り歩き、専門家「数字に惑わされないで」…[虚実のはざま]反響編<下>

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 連載「虚実のはざま」に読者から寄せられた反響の中には、新型コロナワクチンを巡り「ネットを見ていると真偽不明の情報があふれている。何を信じていいのか分からない」という不安の声もあった。

多くが評価不能

 SNS上では、感情をあおるような表現で「ワクチンを打つと危険」と主張する投稿が飛び交っており、こうした情報に触れ、接種をためらう人もいた。

 不安を感じる理由として挙げたのは、ネットで目にした接種後の死者数だ。「1000人を超えている。陰謀論を信じているわけではないが、数字を聞くと怖くなる」「詳しく知りたい」との要望が目立った。

「接種後」の死者数が独り歩き、専門家「数字に惑わされないで」…[虚実のはざま]反響編<下>

 厚生労働省に対し、接種後に亡くなった人として医療機関などから報告された数は、ファイザー製とモデルナ製で計1093人(2月17日~8月22日)。だが、「この数字だけに惑わされてはいけない」というのが専門家の見解だ。

 厚労省は定期的に専門家を集めた「副反応検討部会」で、接種と死亡の因果関係を調べているが、8人は「認められない」、99%の1085人は「情報不足のため評価できない」と結論づけた。つまり現時点で「接種が原因の死亡」と確認された例は国内ではない。

 副反応検討部会長を務める東京医科歯科大の森尾友宏教授(発生発達病態学)は「死者が多く見えるのは、接種が高齢者から先に進んだことも関係しているのではないか」と語る。

 接種の有無にかかわらず、高齢者は若年層より死亡リスクは高い。実際、接種後の死者を年齢別にみると、90%が65歳以上だった。

 厚労省は医療機関などに対し、因果関係がはっきりしない例も含め、報告するよう求めている。

 報告された死因別では多い順に心不全97人、虚血性心疾患96人、出血性脳卒中82人などとなっており、国内で死者数の多い病気が上位を占める。接種とは直接関係なく、基礎疾患などが原因で亡くなった人も多いとみられている。

 森尾教授は「医療機関は実際、死亡事例などを積極的に報告してくれていると感じる。副反応検討部会はリスクを正しく判断するのが目的で、事例を広く集めて分析することが重要だ」と話す。

報告増える傾向

 SNS上では「インフルエンザワクチンより、はるかに死亡率が高い」「危険性が隠されている」などの投稿も拡散しており、そうした情報を理由に心配する声も寄せられた。

 これに関しては、医薬業界で知られる「ウェーバー効果」で説明できる可能性がある。新しい薬やワクチンが登場した直後は、副作用や副反応の報告が多い傾向が出る現象だ。

 100万回接種あたりの接種後死者数をみると、コロナワクチンは9・2人で、2019~20年に国内で接種された季節性インフルエンザワクチンは0・1人。だが、古くから使われているワクチンと新しいワクチンを単純比較しても正しく評価はできない。

 09~10年に流行した新型インフルエンザ用に開発された国産ワクチンは当時、5・8人。この際は未成年が優先接種の対象で、接種者に占める高齢者の割合もコロナワクチンよりも低く、条件が違っていた。

 厚労省によると、事例の多くが「評価不能」になる理由は、死亡時の詳しい状況がわからず、ほとんど解剖されないためだという。

 宮坂昌之・大阪大名誉教授(免疫学)は「接種後の死亡者数を見て過度に心配する必要はないが、評価不能の例が多いことが、ワクチンに対する不安につながっている」と指摘し、詳しい死因をコンピューター断層撮影法(CT)や磁気共鳴画像(MRI)などで調べ、因果関係の評価をしやすくすることを提案する。

◆ご意見や情報提供は、取材班まで。メール<kyojitsu@yomiuri.com>

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