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後遺症「ブレーンフォグ」に苦しむ人、感染半年後に脱毛した人…体だるくても「周囲は普通に接してくる」

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 新型コロナウイルスの「第5波」の影響もあり、感染から回復した後も後遺症に悩む人が増えている。働き盛りの世代などに目立つが、対応できる医療機関は限られている。専門外来を持つ大阪市内の病院には受診予約が殺到し、5か月先まで埋まる状況だ。診察する医師は「もっと患者をサポートできる受け皿を作ってほしい」と訴える。(東礼奈)

後遺症「ブレーンフォグ」に苦しむ人、感染半年後に脱毛した人…体だるくても「周囲は普通に接してくる」

 コロナ後遺症には様々な症状があり、現時点で明確な定義はないが、例えば症状が4週間以上続く場合などに診断される。発症のメカニズムなど未解明の部分が多く、全体像ははっきりしていない。

 大阪市北区の総合病院、北野病院(685床)は6月に後遺症外来を設け、診療所から紹介された患者を中心に約30人を診察してきた。昨年4月からコロナの入院患者を受け入れるが、 丸毛まるも 聡・呼吸器内科・感染症科部長は「退院後のサポートが十分にできておらず、後遺症に悩む人たちを支えたいと思った」と語る。

 相談で最も多いのは「体がだるい」「何もする気が起きない」といった 倦怠けんたい 感の訴えだ。息苦しさや嗅覚・味覚障害、頭の中に霧がかかった感じになり、深く長く考えることができない「ブレーンフォグ(脳の霧)」という症状に苦しむ人も目立つ。感染から約半年たって脱毛した人もいる。

 身近なかかりつけ医を持たない働き盛りの世代や学生が多く、「体がだるいのに、周囲が普通に接してくるのがしんどい」と訴えた高校生もいる。

 飲食店のシェフで独立して開業しようとした矢先に感染し、味が全くわからなくなった患者もいた。味覚障害は亜鉛不足が関係していることが多く、このケースも亜鉛を補充することで味覚が戻ったという。

 多様な症状に対応するため、治療は循環器内科や脳神経内科、皮膚科、神経精神科などと連携する。MRI(磁気共鳴画像装置)などで検査しても、肺や脳などに異常が見つかることはほとんどなく、薬などで症状を和らげる対症療法が中心だ。多くは快方に向かうが、1年以上も症状が続く場合もある。

 初診は毎週水曜日しか受け付けていないが、第5波の影響などで8月下旬以降、依頼が急増し、新規の予約は来年2月までいっぱいになっている。兵庫県や奈良県など府外の人も目立つ。再診は水曜日以外も対応し、繰り返し受診する人が多い。感染拡大が収まって入院患者の受け入れが減れば、後遺症外来の拡充を検討する。

 丸毛部長は「後遺症は『心の問題』と片付けられることもあるが、患者が安心できる環境を作るため、行政や学会がもっと支援に動いてほしい」と話す。

 4月に後遺症外来を設けた邦和病院(堺市)でも9月半ば以降、患者が急増している。予約制ではなく、約半年で270人以上を診察した。症状が良くなるまで3、4回通院するケースが多いという。

相談、働き盛りが6割…大阪府

 コロナの後遺症を巡っては早くから支援体制の強化を求める声が上がっていた。

 米国立衛生研究所(NIH)は今月、後遺症に関する総額約510億円規模の研究プロジェクトを始めると発表。感染者からスマートフォンのアプリなどを通じて健康データを収集し、後遺症のメカニズム解明や予防などに役立てる。

 一方、国内では一部の医療機関や大学が専門外来を設けるだけで取り組みは遅れている。東京都は今春、都立・公社8病院に相談窓口を設置し、埼玉県は県医師会と連携して10月に7、8か所程度の医療機関に専門外来を設ける予定だ。

 大阪府は7月から、後遺症に関する電話相談を受け付け始めた。症状に応じて受診可能な約60の医療機関を紹介している。7月に寄せられた相談のうち具体的な症状を訴えた208件でみると、働き盛りの30~50代が全体の59%(122件)を占めた。症状別(複数回答可)では倦怠感が63件で最も多く、次いで嗅覚障害53件、味覚障害44件だった。

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