山中龍宏「子どもを守る」
子どもは成長するにつれ、事故に遭う危険も増します。誤飲や転倒、水難などを未然に防ぐには、過去の事例から学ぶことが効果的です。小さな命を守るために、大人は何をすればいいのか。子どもの事故防止の第一人者、小児科医の山中龍宏さんとともに考えましょう。
医療・健康・介護のコラム
子どもを乗せたままスタンドを立て…搬送の8割は「停車中」の事故 増える電動アシスト自転車の転倒
これまで、乳幼児の転落事故が多く起こっている階段や椅子についてお話ししてきましたが、今回は電動アシスト自転車の補助椅子からの転落について、 消費者安全調査委員会の報告書 を見てみましょう。

イラスト:高橋まや
停車中の事故が8割
東京都消防庁の7年間(2011年から17年)の救急搬送データでは、幼児が同乗していた自転車事故1221人分のうち、停車中の事故が8割を占め、 そのうち92%の子どもがケガをし、その63%が前座席に座っていて受傷していました 。保護者が、子どもや自転車から離れたり、目を離した時の受傷が約半数を占め、続いて子どもの乗せ降ろしの時、停車や駐車でスタンドを立てる時、子どもが座席で動いたり、子どもが自分で自転車に乗り降りする時に発生していました。
医療機関ネットワークのデータでは約半数が走行中の事故で、そのうち、バランスのくずれが半数近くを占め、巻き込み、スリップなども起こっていました。
事例1 :3歳。親が運転する自転車がバランスを崩して転倒し、小児用座席に乗っていた子どもが頭部をアスファルトにぶつけ、受傷した。
事例2 :1歳。自転車の小児用座席に子どもを乗せて停車中、母親が目を離した際に自転車ごと倒れ、子どもが受傷した。
このような事故が、たくさん起こっています。
買い物袋や園の道具をハンドルに…非常に不安定
自転車に幼児を乗せる場合、ハンドル中央部に幼児座席が装備された前乗せタイプ、後部に幼児席が装備された後ろ乗せタイプ、前部、後部、または両方に後付けで幼児座席を設置する一般用自転車があります。電動アシスト自転車は本体が重く、子ども2人と親の体重が加われば100キロを超してしまいます。さらに、子ども用シートや雨カバーなどを付け、場合によっては買い物袋や園の道具などの荷物をハンドル部分につり下げていて、非常に不安定な状態になります。じっとしていられない子どもを乗せた状態では、親が手を離したらすぐに倒れてしまいます。幼稚園、保育所への送迎などで、年々、子育て世帯での電動アシスト自転車の需要が高まっており、調査では、保育園へ自転車で送迎している保護者の7割超が電動アシスト自転車を使用していました。それに伴い、自転車が転倒し、乗っていた子どもが転落して救急搬送される事故が増加しています。そこで、消費者安全調査委員会によって使用実態調査や走行実験が行われました。
同乗している幼児の位置の観察では、1人同乗の場合は7割が後座席、2人同乗の場合は8割以上が前後の座席でしたが、中には抱っこしていたり、3人同乗していたりするケースもみられました。同乗する幼児の全員がヘルメットを装着していない割合は47%、同じく全員がシートベルトを装着していない割合は42%でした。
事故やヒヤリハットの経験は、回答者の54%にみられ、電動アシスト自転車を使用している人(57%)の方が、電動アシストでない自転車を使用している人(47%)より10%高くなっていました。同乗形態別にみた経験者の割合は、前後座席(75%)、後座席のみ(60%)、前座席のみ(45%)となっていました。
自転車の状態別では、走行中(33%)、停車中(30%)、押し歩き中(15%)、こぎはじめの時(7%)となっていました。
事故に影響があったものとしては、走行中は、車、歩行者、他の自転車などや、段差、縁石、側溝など外的な要因が多く、停車中は、子どもの動きや、自転車そのものの要因(重さ、故障、電動アシスト機能など)が多いことがわかりました。
1 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。