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バセドウ病の手術 「内視鏡」公的医療保険の対象に…傷も目立たず

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 のど仏の下にある甲状腺に異常が生じ、新陳代謝を促すホルモンが過剰に分泌される病気が「バセドウ病」です。薬を飲んだり甲状腺を切除したりして治療します。最近は、傷が目立たない「内視鏡手術」が公的医療保険の対象となり、広がりつつあります。(大沢奈穂)

女性に多く発症

 バセドウ病は、約400人に1人の割合で発症します。患者は女性に多く、男性の3倍以上です。

 甲状腺の腫れや 動悸どうき 、息切れ、手の震え、体重減少がよくみられます。1、2割の患者は、眼球が突出します。

 国立病院機構京都医療センター内分泌・代謝内科診療部長の田上哲也さんは、「何となく体調が悪いといった状態が続き、バセドウ病だと分からず、治療の開始が遅れる人もいます。血液検査で簡単に調べられるので、不調があれば検査を受けてください」と助言します。

 治療するには、まずホルモンの分泌を抑える薬を飲み、症状の改善を図ります。早ければ2年で薬を飲まなくてもよくなります。

 それでもホルモンの過剰分泌が治まらなかったり、肝機能障害などの重い副作用が出たりする場合は、「アイソトープ治療」や甲状腺を摘出する手術を検討します。

 アイソトープ治療は、放射性ヨウ素を飲み、甲状腺を小さくします。ただ、近いうちに妊娠を希望している人は受けられません。18歳以下の人も原則的にできません。

公的保険の対象

 一方、短期間で確実に治療したい人やアイソトープ治療を受けられない人には手術をします。甲状腺を全部取ってしまうため、手術後は、ホルモンを薬で補充する必要があります。

 現在、多くの医療機関で実施されている手術は、のど仏の下あたりを横に7、8センチ切開する方法です。1、2年で傷は目立たなくなりますが、手術をしてしばらくは、見た目を気にする人もいます。

 これに対し、傷を小さくできるのが内視鏡手術です。鎖骨の下や胸のあたりなど、服で隠れる部分を2、3か所、小さく切ります。切り口から、切除器具と内視鏡カメラを挿入して実施します。傷は、1年ほどで目立たなくなります。

 約1年半前に内視鏡手術を受けた福岡県の大学生、大山風香さん(23)は「病気を隠していたので、手術の傷が人目につく部分にできるのは避けたいと思っていました。傷は服で隠れるので、気にせずに済みます」と喜んでいます。

 バセドウ病の内視鏡手術は、2016年度から公的医療保険の対象となり、現在、全国約70施設で実施しています。少しずつ増えていますが、まだ、どの医療機関でも受けられるわけではありません。

 切除器具の操作が難しく、手術にかかる時間は切開手術より30分から1時間長くなります。執刀医の技術にばらつきがあるという課題も指摘されています。

 鹿児島大消化器・乳腺甲状腺外科診療准教授の中条哲浩さんは「内視鏡手術は、甲状腺の腫れが大きすぎる場合、受けられないこともあります。この手術を希望する場合は、まず、主治医に相談しましょう」と話しています。

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