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国内のコロナ入院患児、大半が軽症か無症状 入院例1,038例の解析結果

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 国立成育医療研究センター感染症科医長の庄司健介氏は国立国際医療研究センター(NCGM)と共同で、NCGMが運営する新型コロナウイルス感染症(COVID-19)による入院患者の国内最大のデータベースCOVID-19 Registry Japan(COVIREGI-JP)を用いて、COVID-19小児患者の症状や転帰などについて詳細に分析。その結果、多くは無症状または酸素投与などを必要としない極めて軽症例で、死亡例はなかったことなどを、J Pediatric Infect Dis Soc( 2021年9月6日オンライン版 )に発表した。ただし、研究はインド型変異(デルタ)株が日本で報告されていない時期に実施されたため、デルタ株の影響については評価できないという。

有症状者でも酸素投与の割合は2.1%

国内のコロナ入院患児、大半が軽症か無症状 入院例1,038例の解析結果

※画像はイメージです

 同レジストリを使用してCOVID-19小児患者を対象に分析した研究は今回が初めて。対象は、2020年1月~21年2月に登録された18歳未満のCOVID-19小児入院患者1,038例〔男児571例(55.0%)〕で疫学的、臨床的な特徴を調べた。

 対象の年齢中央値は9.0歳だった。年齢の分布を見ると、2歳未満は16.3%(169例)、2~6歳未満は18.3%(190例)、6~13歳未満は30.2%(313例)、13歳以上は35.3%(366例)だった。気管支喘息、肥満、合併症のない糖尿病、先天性心不全、高血圧、先天性染色体異常などの基礎疾患がある患者が5.8%(60例)含まれていた。

 1,038例のうち無症状者は308例(30%)、有症状者は730例(70%)、有症状者で酸素投与を必要としたのは15例(2.1%)だった。死亡の報告はなかった。

発熱は1割、味覚・嗅覚障害は2割にとどまる

 全体で最も多く見られた症状は咳(37.1%)で、鼻汁(29.5%)、味覚障害(13.0)、嗅覚障害(11.2%)、発熱(38℃以上、10.3%)が続いた。

 年齢層別の解析では、2歳未満では発熱や鼻汁の頻度が高く、13歳以上では咳や味覚・嗅覚異常の頻度が高かった。また、基礎疾患のある小児ではなんらかの症状が現れやすい傾向が見られた。庄司氏らは「今後の小児に対する新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)ワクチン接種について議論していく上で参考になる所見である」と指摘している。

 一方、大多数の患者が無症状または軽症だったにもかかわらず、入院期間の中央値は8日(四分位範囲6~9日)と比較的長期に及んでいた。症状の有無別に入院期間を調べたところ、有症状者は8日(同5~9日)、無症状者は8日(同6~9日)で違いは見られなかった。レジストリには入院理由の記述は含まれていなかったが、無症状または軽症のCOVID-19患者は、パンデミックの初期段階において隔離目的で入院したとされる。

 欧州や南米における国際多施設コホート研究によると、SARS-CoV-2感染小児の集中治療室への入室率は8.2~12.7%、入院例の死亡率は0.7~4.2%と報告されている。これに対し、今回のコホート研究では小児の死亡例は報告されておらず、良好な経過が示された。その原因は明らかでないものの、同氏らは潜在的な理由の1つとして「日本では、SARS-CoV-2感染の数週間後に出現する重度の炎症状態で致命的となるCOVID-19の合併症である小児多系統炎症性症候群(MIS-C)が2例しか報告されていない。さらに、基礎疾患を有する小児やその家族はソーシャルディスタンシングを確保し、手指衛生、マスク着用などの感染対策を忠実に行っている可能性がある」と考察している。

外来患者への一般化、味覚・嗅覚障害の発現率把握には限界も

 庄司氏らは研究の限界として、レジストリへの参加は任意であったことから「日本国内のCOVID-19小児患者の疫学を反映していない可能性がある。また今回の対象は入院患者のみであるため、外来患者に一般化することはできない」点を挙げている。さらに、低年齢児は味覚・嗅覚障害の症状を正確に認識、伝達できないことから、これらの症状の発現率が「過小評価されていたと推測される」としている。(小沼紀子)

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