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Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」

医療・健康・介護のコラム

眠っている間に、脳は老廃物を排出する。アルツハイマー病と睡眠不足の関係は…

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睡眠中にリンパ液が流れやすくなる

 発見者の米国ロチェスター大学・メディカル・センターの研究チームは、この脳内リンパ系が主にグリア細胞で形作られているため、「グリンパティック・システム(Glymphatic System)」と命名しました。グリンパティックとは、グリア細胞「Glial cell」とリンパ系「Lymphatic System」を合わせた造語です。

 非常に巧妙、精密な実験で発見されたため、他の研究施設でまだ追試(他の研究施設の実験で再確認すること)が行われていませんが、さまざまな傍証から多くの研究者はグリンパティック・システムの存在を信じています。

 さて、冒頭で睡眠と脳内リンパ系の働きが密接に関わっていると書きました。実は、脳は神経細胞やグリア細胞、その他の組織などでみっちりと埋め尽くされているため、なかなかリンパ液が流れにくいのですが、驚くべき事に睡眠中に神経細胞間の隙間が大きく拡がり、脳内リンパ液が流れやすくなることが分かったのです。どうやら睡眠中に細胞の体積が縮むかららしいのですが、詳しいメカニズムはまだ分かっていません。

しっかりと睡眠をとることで

 その後の研究で、深く眠った時に脳波活動が遅くなることや心拍数が低下することが、脳内リンパ液の流れを活発にすることも分かりました。また、認知症の患者さんを対象にした臨床研究で、脳の老廃物の一つ「アミロイドβ(ベータ)」の濃度が、睡眠時間が長いほど高くなることも分かりました。アミロイドβは、アルツハイマー病の原因物質の一つと考えられています。睡眠時間が長くなることによって脳脊髄液中のアミロイドβ濃度が高くなるということは、それだけ効率よく老廃物を洗い流せていることを意味しています。

 かなり以前より、睡眠時間が短いことが認知症の発症リスクと関連することが数多くの疫学研究で明らかにされていましたが、グリンパティック・システムの発見により、そのメカニズムの一端が明らかになりました。脳内のアミロイドβの蓄積は40代前後から始まると言われています。睡眠習慣を正すのであればできるだけ若い頃から始めるに越したことはありません。(三島和夫 精神科医)

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三島和夫(みしま・かずお)

秋田大学大学院医学系研究科精神科学講座 教授

 1987年、秋田大学医学部卒業。同大助教授、米国バージニア大学時間生物学研究センター研究員、スタンフォード大学睡眠研究センター客員准教授、国立精神・神経医療研究センター睡眠・覚醒障害研究部部長を経て、2018年より現職。日本睡眠学会理事、日本時間生物学会理事。著書に『不眠症治療のパラダイムシフト』(編著、医薬ジャーナル社)、『やってはいけない眠り方』(青春新書プレイブックス)、『8時間睡眠のウソ。日本人の眠り、8つの新常識』(共著、日経BP社)などがある。

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