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第5波「災害時の対応」、自粛疲れで危機感薄まる状況に医療現場「日々不安募る」

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 昨年1月30日に京都府内で初めて確認された新型コロナウイルスの感染者は11日、計3万3910人(死者257人)を数えた。うち7月以降は、感染力の強いインド由来の変異ウイルス「デルタ株」などの影響で、1万7315人(同14人)と全体の半数を占める。4度に及ぶ緊急事態宣言の期間は累計で約半年に及び、13日からは今月末まで延長される。懸命の対応が続く医療現場を中心に現状を報告する。(増田弘治、梨木美花、三味寛弥)

宇治市以南唯一の「3次救急医療機関」 宇治徳洲会病院

 

 府内の新規感染者が604人と過去最多を記録した翌日の8月27日、宇治徳洲会病院(宇治市)が新型コロナ患者用に確保している病床(20床)は、75%が埋まっていた。

第5波「災害時の対応」、自粛疲れで危機感薄まる状況に医療現場「日々不安募る」

救急搬送される新型コロナの患者(宇治徳洲会病院で)=里見研撮影

 30以上の診療科(473床)があり、重篤な患者を受け入れる宇治市以南12市町村で唯一の「3次救急医療機関」。府内最多の年間9000件の救急搬送にも対応している。新型コロナ病床のうち、中等症向けの12床は救急外来に搬送された患者の経過を診ていたスペースにシャワー室や洗濯機を備えて整備した。重症用の8床は、救命救急センターにあった「高度治療室」を利用。「発熱者外来」では、車に乗ったまま問診や抗原検査を受けてもらう仕組みを取っている。

 取材当日、中等症向けで10人、重症用病床は5人が治療を受けていた。うち人工呼吸器が必要になったのは4人。ほかに宿泊療養中に悪化して他病院に入院し、前夜に転院してきた男性が「体外式膜型人工肺」(ECMO=エクモ)による治療を受けていた。

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レッドゾーンで重症患者の処置をする医療スタッフ(宇治徳洲会病院で)=里見研撮影

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中等症の患者が入院するレッドゾーン(奥)(宇治徳洲会病院で)=里見研撮影

 午後4時、重症用病床で患者の「体位変換」が始まった。患者は日中、仰向けで治療を受け、夕方から翌朝までの16時間はうつぶせにする。夜間に背中側の肺への圧迫を減らし、肺全体の機能改善を狙う治療法だ。

 ただ、患者は麻酔で意識がなく、筋 弛緩しかん 剤も使うため、健康な人の体位を変えるほど簡単ではない。薬剤を体に注入する何本もの管を抜かないよう、細心の注意も必要だ。重症化する患者は肥満の人も目立つといい、医師や看護師、医療機器の扱いに習熟した臨床工学技士が加わり、7人がかりで対応することもあった。

 コロナ患者に当たる医療チームは救急総合診療科、心臓血管内科に所属する医師3人1組で構成している。1チームが1週間連続で勤務し、うち1人は3日に1度、宿直が回ってくる。体位変換に加わった一人は、宿直明けでも患者の対応で帰宅できずに仕事を続けた若手医師だった。

 

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 チームを統括する松岡俊三副院長が、昨年以降のコロナ禍を振り返る。「第3波の患者急増では大みそかが大変だった。院内感染を防ぐため、緊急に隔離区域を作り、必死に対応した」。それでも第3波、第4波は「大きな波がゆっくりやってくる」印象だった。一方、第5波は「津波に襲われた感覚」に陥ったという。8月14日以降は入院患者数が2桁になる日が続き、22日には19人と、満床一歩手前までになった。

 「災害時の対応で臨む」。末吉敦院長も8月末の医局会議でこう言明した。感染力が高いデルタ株が背景にあり、第3波で69・4歳だった入院患者の平均年齢は、第5波で48・9歳に下がった。若い世代も重症化する恐れがあり、これまでと違う拡大傾向は、通常の医療体制ではまかなえない。その危機感を院内共有した。

 病院は13日から、病床を40床増やす。うち20床は重症化を防ぐ「抗体カクテル療法」の実施に充て、残りは中等症患者の治療や抗体カクテル療法を終えた人の経過観察に用いる。

 松岡副院長は「府内の医療体制が拡充し、開業医の協力も得られ始めた。とはいえ、今も地域の病院や診療所の役割分担に課題がある」と語り、言葉を継いだ。「市民の危機感が『自粛疲れ』で薄まりつつある状況に、日々、病院が機能しなくなる不安が募る」

 

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