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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

子ども用の椅子に立っていた子が転落し頭部骨折 「高さ75センチ以上」は大けがのリスク

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座面に立つと高まる大けがのリスク

 椅子からの転落について、ダミー人形を使った検証が行われました。転落したときのケガで最も問題となるのは頭部外傷です。頭部の傷害の可能性を検討する指標として、頭部傷害基準値(Head Injury Criteria:HIC)という指標があります。HICが1000を超えると、中程度の頭部損傷(頭蓋骨の骨折、意識喪失を伴う顔の骨折、深い切り傷など)が発生する確率は約90%となり、まれに死亡することもあります。

 そこで、乳幼児の頭部が床面に接触した際に受ける衝撃の計測が行われました。床材として、コンクリート、フローリング、フローリング+カーペット、フローリング+クッションマット、畳、土について、各材質の致命的な頭部損傷の可能性が検討されました。座面に乳幼児が座った際の頭部の高さは75センチ以上となり、一般家庭にあるフローリングでも、この75センチを超えるとHICが1000を超えてしまいます。乳幼児が座面に立った場合は、さらに大きく超えてしまいます。

転落を予防するために必要なこと

 ハイチェアの使用に関する注意表示として、「椅子に座らせた乳幼児を一人で放置しないでください」「乳幼児を座面に立たせないでください」などと書かれていますが、日常生活の中で、1~2歳児がいる保護者にそれを確実に実行してもらうことは不可能だと思います。5点式ベルトをきちんと装着して、乳幼児が座面に立ったり、そのまま前のめりに転落したり、座面とテーブルの間からすり抜けて落ちないよう体の動きを抑制することが必要です。

 なぜ、同じ転落が起こり続けているのでしょうか? 東京消防庁からは、毎年、転落の搬送数、転落した場所が報告されていますが、どのように転落したかのデータはありません。転落する直前から、転落した直後までの詳しい状況がわからないと予防を考えることができないのです。子どもの身長、どのような椅子か、ベルトの位置や固定状況、どこをつかんで立ち上がったのかなどの情報が必要です。保護者の方から、これらの情報を収集して分析すれば、椅子の製造業者は、転落の危険性を軽減させる椅子を製作することができると思います。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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