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「コロナは茶番」700人デモ、「普通の人」が先鋭化…[虚実のはざま]第4部 深まる断絶<1>

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 科学的根拠のない情報が、人々の負の感情をあおり、社会に断絶を生んでいる。ネット空間の虚実を考えるシリーズの第4部は、コロナ禍で起きた現象の深部に迫り、教訓を探る。

陰謀論「輸入」

「コロナは茶番」700人デモ、「普通の人」が先鋭化…[虚実のはざま]第4部 深まる断絶<1>

東京と京都で7月に行われたデモで「マスクを外そう」などと訴える参加者と、家族らのワクチン接種を止めようと呼びかけるツイッターの投稿=画像は一部修整しています

 4度目の緊急事態宣言が東京に発令され、まだ間もない7月の週末。JR新宿駅前に、その一団が現れると雰囲気が一変した。

 集まったのは男女700人以上。「新型コロナは国際茶番」などと書かれたボードや横断幕を掲げ、目抜き通りでデモ行進を始めた。マスクをした人は誰も見当たらない。

 「ワクチンによる人体実験をやめろ」。叫び声が何度も街に響く。驚いた様子の通行人に「いつまでだまされているんだ」と言葉を浴びせる参加者もいた。

 同じ日、名古屋や京都でも数百人規模のデモが行われていた。各地で連呼される内容は、欧米を中心に広がる陰謀論だ。

 こうした言説を「輸入」しては日本語にし、SNS上で拡散するグループが多数あり、連携してデモを行っているという。

最初は半信半疑

 「こんなに大勢の人が集まっている。やはり正しい情報なんだと確信した」

 3歳の長男を連れ、東京のデモに参加した女性(31)が語った。

 昨年は感染におびえ、「ママ友」と公園に行くのも自粛していた。考えが変わるきっかけは、友人に招待されたフェイスブック(FB)グループだった。

 <PCR検査は偽装。本当はただの風邪><ワクチンを打たせるのが目的>

 飛び交う投稿を見て、最初は半信半疑だった。しかし自宅にこもる生活の中、FBは人とつながる数少ない場だった。「私も認められたい」と思い、真偽不明の情報をネットで見つけて投稿すると、称賛された。いつの間にか、やり取りにのめり込んでいた。

 女性は今も、根拠のない説を固く信じる。

 「ワクチンは人を操るために作られた」

あふれる同調

 接種するかどうかは、個人が正確な情報に基づいて判断することが重要だ。

 だがSNS上では、明らかに誤った情報でもフォロワー(登録者)の間では「素晴らしい」「拡散します」と同調する反応があふれる。公的機関の情報に基づいて誤りを正す意見は、ほぼ目に入らない。

 閉じた空間で共鳴しているうちに、「普通の人」が先鋭化していく。そんな危うさが垣間見える。

 大切な人に接種をやめさせよう――。こう呼びかける投稿は「画像を見せて怖がらせる」と記し、使用を勧める写真を多数載せている。外国人らしき男女が、重い副反応に苦しんでいるような写真だが、真偽は不明だ。それでもツイッターでは「これで母親を止めました」「説得に成功」などの声が相次いだ。

 関西のグループは、接種機会が増えている大学生を狙い、各地の学生マンションを回ってビラを 投函とうかん している。根拠なく不安をあおる情報や写真を載せており、4万枚以上が配られたという。

 九州に住む元教師の女性(70)も、ユーチューブで見た陰謀論に触発され、街頭でビラ配りを始めた。女性は「本当のことを知らせないといけないんです」と力説した。

ワクチン接種の妨げに

 コロナを巡る陰謀論の拡散は、世界的に無視できない脅威となっている。

 各国でワクチンやロックダウン(都市封鎖)に反対するデモが過激化する一因とされ、オーストラリアのシドニーでは7月、警察との激しい衝突が発生。数十人が逮捕された。

 米国ではワクチン接種の妨げになっており、信じていた人が感染し、死亡するケースが相次ぐ。

 米ハーバード大などの研究者は6~7月、約2万人を対象にワクチンの誤情報を信じる割合を調査。▽接種者のDNAを変化させる▽マイクロチップが入っている▽胎児の肺組織が含まれている▽不妊の原因になる――の四つについて聞いた結果、少なくとも一つを「正しい」と答えた人は2割に上った。

 米国社会の分断を研究する慶応大の渡辺靖教授は「『もう一つの真実』を信じる人が増え、人々の対話が成り立たない状況が悪化している。日本も対岸の火事ではなくなるかもしれない」と危機感を示す。

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