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武井明「思春期外来の窓から」

医療・健康・介護のコラム

「体重が減るのが今の私の支え」…有名進学校の女子高校生が体重31キロ、生理も止まるまでやせたわけ

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優等生だった娘の苦しみを知り…

 綾乃さんが入院中、お母さんは定期的に病院を訪れて、主治医との面接を繰り返しました。お母さんは、これまで優等生として手のかかることがなかった綾乃さんが、実はとても苦しみながら懸命に学校生活を送ってきたことを知りました。その後のお母さんは、綾乃さんのこころに寄り添うことを心がけて接するようになりました。

 綾乃さんは高校を卒業して大学に進学していますが、神経性やせ症の再発はみられていません。

やせることで周りの関心を集められる

 神経性やせ症の女子を見ると、どうしても「やせた体」に目を向けてしまいがちです。でも、彼女たちが最もつらく感じているのは、劣等感や挫折感で満ちあふれた出口の見つからない 閉塞(へいそく) 感なのです。優等生であった綾乃さんの場合は、高校入学後から勉強や友だち付き合いがうまくいかず、学校生活に行き詰まっていました。そこから抜け出すために、やせることを選択したのです。常に体重を気にしてやせることに懸命になることで、自分が置かれているつらい現実世界から一時的にでも離れられるわけです。食欲や体重を自分でコントロールすることによって得られる達成感や満足感が、自分のこころの支えになってくれるのです。

 極度にやせることで、周りの大人から注目を集めることができることも、神経性やせ症の特徴かもしれません。発症前の彼女たちは、周りから気づかいを受けることがないほど、「しっかりした子」「手がかからない子」などと見なされています。「幼いきょうだいに手がかかり、母親の関心が患者に向けられていない」というケースもしばしばあります。学校でも、教師が彼女たちを頼りにして、手助けが必要な生徒を預けてしまう、というのもよくある話です。そのような彼女たちは、極端にやせた体形になることで、周りの関心と気づかいを集められるようになると想像されます。

 神経性やせ症の患者が回復するには、やせることへのこだわりに代わる、生きる意味や目的を新たに見いだすことが必要です。しかし、勉強や部活動にだけ全精力を注ぎ込んできたまじめな彼女たちが、他の生き方を見つけるのは容易なことではありません。そのたいへんな道のりに伴走していくことが、精神科医の役割だと考えています。(武井明 精神科医)

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武井 明(たけい・あきら)

 1960年、北海道倶知安町生まれ。旭川医科大学大学院修了。精神科医。市立旭川病院精神神経科診療部長。思春期外来を長年にわたって担当。2009年、日本箱庭療法学会河合隼雄賞受賞。著書に「子どもたちのビミョーな本音」「ビミョーな子どもたち 精神科思春期外来」(いずれも日本評論社)など。

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