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大橋博樹「かかりつけ医のお仕事~家族を診る専門医~」

医療・健康・介護のコラム

若い世代が亡くなる新型コロナ第5波 その陰に「無自覚の糖尿病」が存在……五輪開会式聖火ランナー・大橋博樹医師が語る

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多くのコロナ患者を診ているのに抗体カクテル療法が使えない

――重症化を防ぐ治療法として、1回の点滴で行う抗体カクテル療法が外来でも使えるようになりました。どのように受け止めていますか。

 軽症の時に使うと悪化が防げるというデータが出ています。積極的に使いたいのですが、「外来で使える」と言っても、入院施設がある医療機関限定なので、うちでは使えません。自宅療養の患者さんには使えるのですが、僕らが訪問する方はすでに重症化しているので対象になりません。うちのように発熱外来で多くの新型コロナ患者さんを診ているところでは、ベッドがなくても外来で使えるようにしていただきたいですね。軽症で見つけ、糖尿病など基礎疾患のある方には、その場で投与できるようにする必要があります。

重症度を効率よく判断できる野戦病院が必要

――コロナ患者をたくさん診ていて、ほかにどのような課題がありますか。

 これからのことを考えたら、野戦病院のような施設が必要です。すぐに入院しなければいけない人を見つける目的に特化した施設。訪問して自宅療養者を診られるのは、どんなに頑張っても半日で4、5人。病状が急変する場合もあるので、緊急の入院が必要な重症者を往診で選別するのは限界があります。患者さんを1か所に集めて、管理できる場所が必要です。

 病院の先生に聞くと、もうひとつの問題があります。保健所の判断で入院させるわけですが、中等症と言われたけど、実際には軽症だったという話もあって、それでも既定の入院観察期間は入院させる方針の病院が多いので、無駄にベッドを使っている面があります。若い人などは、よくなったら自宅に帰して訪問診療につなぎ、中等症用のベッドを空ける流れも重要です。

――先生も含め、「災害のような状態」という言葉を、コロナ診療を担う医師から聞きます。しかし、街はいつもよりも人が少ないものの、一般にはピンときていないようにも見えます。

 僕たちは、この診療所から見えるマンションや裏のお宅に危険な状態の患者さんがいるけど、入院できないということを知っています。うちの診療所も、通常診療を減らして発熱外来をやっている緊急体制ですから、この川崎も被災地という感覚です。でも、市民の方にはそれが伝わりません。「俺は病人なのになんで診てくれないんだ」と文句を言われたりして、心が折れてしまった職員もいます。東日本大震災や熊本地震で、診療所を休診にして現地で医療支援をした時には、患者さんから差し入れをいただくこともあって、ご理解いただいたのですが、コロナの感染拡大では、災害を実感しにくいようです。

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大橋博樹(おおはし・ひろき)

多摩ファミリークリニック院長、日本プライマリ・ケア連合学会副理事長。
1974年東京都中野区生まれ。獨協医大卒、武蔵野赤十字病院で臨床研修後、聖マリアンナ医大病院総合診療内科・救命救急センター、筑波大病院総合診療科、亀田総合病院家庭医診療科勤務の後、2006年、川崎市立多摩病院総合診療科医長。2010年、多摩ファミリークリニック開業。

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