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医療・健康・介護のニュース・解説

「保育園見つからず退職」「学校付き添いで共働きできず」…医療的ケア児と家族に安心の環境を 18日支援法施行

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 日常的に医療が欠かせない子ども「医療的ケア児」(医ケア児)やその家族への適切な支援を求める「医療的ケア児支援法」が、18日に施行される。九州・山口でも支援が進んでいるが、取り組みには温度差もある。(高梨忍)

学校などに看護師ら配置

医療的ケア児 安心の環境を…18日支援法施行

八木さん(右)に人工呼吸器を装着してもらう沙良さん(福岡市の「ひだまりのおうち」で)

 「小学校で友だちをたくさん作ってほしい」

 福岡市の八木葵さん(34)が、小学1年の長女、沙良さん(6)のそばでほほえんだ。沙良さんは、呼吸ができなくなることがある難病「先天性中枢性低換気症候群」で、気管を切開している。普段は人工呼吸器を外しているが、疲れた時や集中した時などに呼吸が止まるため、常に見守りが欠かせない。市教育委員会はそんな沙良さんのため、自宅のある校区の市立小学校に看護師を配置。今春入学し、元気に学校生活を送っている。

 医療的ケア児支援法では、都道府県や教委などに、学校や保育所に医療的ケアのできる看護師や保育士を配置することや、家族らの相談に総合的に応じる「医療的ケア児支援センター」を設置することを求めている。

 福岡市は、法の成立に先立って市立学校への看護師配置を進め、現在は17の小中学校・特別支援学校で看護師40人が医ケア児81人に付き添う。昨年度からは、市立保育所でも全7園に配置された。

 八木さんは、以前は沙良さんの世話をほぼ1人で担い、通院以外に自宅から出ることはほとんどなかったという。だが3年前から、市内の児童発達支援・放課後等デイサービス事業所「ひだまりのおうち」に沙良さんを預けるようになって行動範囲が広がり、昨年、幼稚園に就職。沙良さんの入学後も、放課後や夏休みにはデイサービスを利用しながら働き続けている。「安心して預けられる環境があるおかげで働けます」と喜ぶ。

「共働き難しい」

 厚生労働省が全国の医ケア児の家族を対象に行った2019年の調査では、8割弱が「希望する形態で仕事につけていない」と回答。「学校での付き添いが必要なため共働きが難しい」「保育園が見つからないので仕事を辞めなければならない」といった声が寄せられた。

 当事者らでつくるボランティア団体「ウイングス医療的ケア児などのがんばる子どもと家族を支える会」の本郷朋博代表(38)(東京)によると、現在も学校に看護師が配置されないケースは多く、付き添いなどのために働けない親が大半という。本郷代表は「全国的に見れば、子どもを預けて働ける親は一握り。自治体間の差もあり、法施行はスタートラインです」と強調する。

◆医療的ケア児= 人工呼吸器やたんの吸引、経管栄養といった医療的な介助が常に必要な未成年者。厚生労働省の2019年推計では全国に約2万人で、医療技術の進歩を背景にこの10年で倍増した。文部科学省によると19年度、特別支援学校や小中高校、幼稚園に9845人が在籍し、増加傾向にある。

センター設置 親の要望強く

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 親の要望が特に強いのが、相談、助言や支援機関との連絡調整などを担う「医療的ケア児支援センター」の設置だ。医ケア児を巡る相談は、医療、教育、福祉など複数の分野にまたがるため、窓口の一本化による親の負担軽減は急務となっている。

 香川、高知両県は4月に支援センターを設置し、助言や情報提供、支援者の育成などに取り組む。だが全国的にはまだ少なく、設置を決めていない自治体が多い。

 九州・山口の8県では、佐賀県が7月に相談窓口「在宅生活ホットライン」を開設し、看護師らが電話やメールなどで応じている。長崎県は「設置する方向で検討」とし、他の6県は「国の動向などを注視」(宮崎県)などとした。

 自治体独自の取り組みもある。福岡県は昨年3月、県内の相談窓口や支援策などをまとめた「ハンドブック」を作成して配布。山口県も同年12月に同様の「サポートブック」を作ったほか、保護者が医ケア児の病状や緊急連絡先などを書き込める手帳=写真=を発行した。いずれも県のサイトからダウンロードできる。

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