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顔や首のがんに光免疫療法…レーザーで狙い撃ち 根治の可能性も

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 光を当ててがん細胞を破壊する「光免疫療法」が昨年11月、公的医療保険の適用になりました。顔や首にできる 頭頸部とうけいぶ がん患者が対象になります。世界に先駆けて日本で実用化されました。手術や放射線、抗がん剤、免疫療法に続く「第5のがん治療法」と期待されています。(西原和紀)

治療は最大4回

 光免疫療法は、点滴薬「アキャルックス」と光を出す医療機器を使います。薬剤は、がん細胞にくっつく抗体と特定の光にだけ反応する色素を組み合わせたものです。患者に投与後、光を当てると色素が化学反応を起こして、がん細胞を破壊します。がん細胞を狙い撃ちするため、周囲の正常な細胞は傷つけにくいとされています。

 頭頸部がんのうち、局所で進行したり再発したりして手術できないケースが対象です。がんが光の当たりにくい場所にある場合は、治療ができません。

 治療はまず、薬剤を2時間以上かけて点滴で投与します。

 薬剤は1日かけてがん細胞に集まっていきます。投与から20~28時間後に全身麻酔をした上で、がんにレーザー光を照射します。レーザー光はがんの表面に体の外から当てる方法と、超音波(エコー)で確認しながらがんに針を刺し、光ファイバーを挿入して体の中から当てる方法の2種類があります。

 がんが縮小しないなど効果が不十分なときは、4週間以上の間隔を空け、最大4回まで治療ができます。

 薬剤を製造販売する楽天メディカルジャパンによると、今秋までに全国約40か所で治療ができるようになる見込みです。

根治の可能性も

 関西医科大病院(大阪府枚方市)は7月中旬に1例目の治療を実施しました。咽頭がんを再発した60歳代の男性です。1週間程度、光を当てた部分に強い痛みなどがあったものの、9日間の入院で退院しました。がんは縮小し、一定の治療効果がみられました。週1、2回の通院で経過を見ています。

 関西医科大耳鼻咽喉科・頭頸部外科講師の藤沢琢郎さんは、「根治できる可能性を秘めた治療法です。期待して来院する患者さんは多いものの、他に望ましい治療法があるケースが大半です。主治医などとよく相談し、最適な治療法を選びましょう」と話しています。

 重い副作用は抗がん剤治療などと比べて少ないとされていますが、注意すべきものもいくつかあります。

 薬剤の投与後は、強い光を避ける必要があります。「光線過敏症」で皮膚に赤みや痛みが出る恐れがあるためです。約1か月間はなるべく直射日光を避け、外出時は肌の露出を避けるなど、皮膚や目に強い光が当たらないようにします。

 強い痛みや舌の腫れ、のどのむくみなどが出ることもあります。

 1回の治療費は薬代だけで約400万円と高額です。高額療養費制度が使えるため、自己負担額は軽減されます。

 光免疫療法は、食道がんや胃がんで治験が進んでいます。この治療法を開発した米国立衛生研究所(NIH)主任研究員の小林久隆さんは「数年以内にがんの7~8割をカバーできるようにしたい」と話しています。

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