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森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

慢性痛にお酒は良い?悪い?…生活習慣と痛み

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 「慢性痛」を訴えて私の外来を受診された患者さんから、「そうそう、日常生活で気をつけるポイントって何かありますか?」と聞かれることが多い。慢性痛とひとことで言っても、多種多様。たとえば頭痛と腰痛とでは注意すべき点は自ずと異なる。そこで、今回は日常生活での一般的に注意すべき事柄について紹介しておこう。

“百薬の長”の側面はあるが…

慢性痛にお酒は良い?悪い?…生活習慣と痛み

 なかでも多く聞かれるのが、「酒が痛みにどう影響するのか」である。決まって帰り際に、「センセ~、酒、飲んでもええかな? “百薬の長”なんでしょ」とくる。なるほど飲むのね、聞きにくかったのね、である。「酒には特定の病気に対する予防効果がある」との記事をよく目にするが、百薬の長としての側面を持つことは事実である。

 酒は痛みに対しても有効に作用する。飲酒によって血液の流れが良くなり、組織への酸素の供給が増える。さらには、痛みの原因となっている発痛物質を洗い流してくれるのである。事実、酒によって痛覚 閾値(いきち) (ある刺激を痛みとして感じ始める強さ)が上昇する。

 しかし、である。炎症がある場合には、酒によって炎症が増強されて痛みは強くなる。また、飲酒後には、反動で血管が収縮して痛みを増すことだってあるのだ。過ぎたるは及ばざるがごとし。飲み過ぎはいけません、適量を守りましょう。

 慢性痛の話題からは少し外れるが、1992年にボルドー大学で酒の効用についての画期的なデータが発表された。赤ワインに心臓病の予防効果があるというのである。フランスでは、イギリスと比べて飽和脂肪酸(肉類に多く含まれる。コレステロールや中性脂肪を増やし、動脈硬化を引き起こしやすい)の摂取量が多いにもかかわらず、心臓発作で亡くなる方が少ない。理由はブドウの皮に含まれるポリフェノールが、血小板(血液を固める成分)の凝集能(固まる力)を低下させて心筋 梗塞(こうそく) を起こしにくくするのである、これを“フレンチパラドックス”と呼ぶ。左党のみなさんは「わが意を得たり」といったところであろう。

「帯状疱疹後神経痛」の人はお風呂を好む?

 次に、入浴はどうだろうか? 湯船につかると、血の流れが改善されて組織の代謝が促進し、筋肉が 弛緩(しかん) して痛みが和らぐ。さらには自律神経が安定することで、痛みが軽くなる。たとえば「帯状 疱疹(ほうしん) 後神経痛」による痛みを抱えておられる方の多くは、お風呂を好まれるはずである。一方で「片頭痛」に悩まされている患者さんでは、頭痛発作が起きている時の入浴はお勧めできない。もちろん飲酒後の入浴もいけません。

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森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

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