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困難によりそう<中>コロナ禍で仕事を失い、家も…「住宅弱者」を支える

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困難によりそう<中>家失った私 再生への第一歩

介護関係の資格取得を目指し勉強する男性。参考書は図書館で借りた(長野市で)

 新型コロナウイルスの感染拡大は、住まいの確保に影を落としている。仕事を失った人が、会社の寮に住み続けられなくなって行き場を失うケースが少なくない。そんな中、「住宅弱者」を支え、自立を後押しする動きも出てきている。

シェアハウス 安価に半年間 就労も支援…長野県社協

 「この家を拠点にいろいろな場所に足を運べるし、将来をじっくり考えることもできる。住む場所があるのはやっぱり大事ですね」。6月中旬、長野市にある団地に入居した男性(41)は話す。

 暮らしているのは、3人まで入居できる3DKの間取りのシェアハウス。生活に必要な冷蔵庫、洗濯機といった家電のほか、布団などが備え付けられている。長野県社会福祉協議会が運営していて、家賃は水道光熱費などを含めて月額5000円だ。

 ただし、住めるのは最長で6か月。入居者は、その間に自立を目指して就職活動したり勉強したりする。

 男性は都内で自営で働いていたが、新型コロナの影響でパソコンサポートなどの仕事が減った。元々、山が好きだったため、移住するつもりで今年3月から長野県安曇野市の会社で働いた。しかし、労働条件を巡ってトラブルになり、退社。寮を出ることになって住む場所を失った。

 出身地の千葉県で生活を立て直そうとしたが、思うように行かなかった。そんな時、長野県社協の「かりぐらしスタートプロジェクト」のことを思い出した。寮を出なければならなくなった際に、住まいに困って安曇野市の社協に相談し、紹介してもらっていた。

 男性は県社協の就労支援を受け、介護など福祉関係の仕事を探している。「福祉に助けてもらった。今度は自分が福祉に恩返しをする番」。仮暮らしの部屋で、ステップアップするために介護関係の資格取得を目指して勉強を始めた。「ここを出る時に向け、仕事を見つけて前に進んでいきたい。だんだん先が見えてきました」と笑顔を見せた。

 プロジェクトでは、県社協が3戸のシェアハウスを運営し、新型コロナの影響で困窮する人に、住まいと就労をセットで支援してきた。県社協の山崎博之さん(40)は「11月でこのプロジェクトは終了する予定だが、自立に向けて新しいスタートを切ろうとする人たちを応援できたと思う」と話している。

生活保護OKの物件探しも…東京のコンサル

困難によりそう<中>家失った私 再生への第一歩

男性と打ち合わせする柿本さん(右)(東京都渋谷区で)

 住まいを見つけるのが難しい「住宅弱者」たちの物件探しの相談に乗るコンサル会社がある。宅地建物取引士の柿本志信さん(50)が2017年に設立した「Well-being.Tokyo」(東京)だ。

 きっかけは、自身が約7年前に患った大病だった。右半身が不随になった時期があり、ほんの少しの段差でも転び、車いすの乗り降りも人の手を借りないと難しかった。

 当時勤務していた不動産会社は、生活保護受給者への物件紹介をすべて断っていたという。柿本さんは「自分自身の体験があったからこそ、住宅弱者を支援する側に回りたいと思った」と語る。

 と言っても、何か切り札があるわけではない。家探しをしている人のニーズを聞き、条件に合う物件をピックアップしたら、「生活保護の方、OKですか?」と片っ端から不動産業者に電話していくのだ。

 だが、家賃滞納などのトラブルを心配して断られるケースもあるという。生活保護受給者に対する世間のイメージは依然として厳しい、と柿本さんは感じている。

 一方で、コロナ禍で失業してしまったなど生活に困窮している状況を丁寧に伝えることで、話を聞いてくれる業者もいる。柿本さんは「理解者を増やしていくことで、少しずつでも業界の雰囲気を変えていきたい」と話す。

 契約社員として都内のコンビニで店長をしていた男性(41)は、コロナ禍で契約が更新されず、会社の寮を出ることになった。その後、8か月間ほど友人宅に身を寄せていたが、そこも出ることになり、今年1月から生活保護を受けている。

 支援者を通じて知り合った柿本さんに相談したことで、東京・豊島区の1Kのアパートに住めることが決まった。現在は柿本さんの仕事を手伝っている。男性は「拾ってもらった命だと思っている。少しでも恩を返したい」と話した。

厚労省が相談窓口

 厚生労働省は7月、インターネットカフェや知人宅で暮らすなど不安定な居住環境にある人の、住まいの困り事相談に応じる窓口(通称・すまこま。)を開設した。支援制度を紹介したり、相談者が滞在している自治体につないだりする。

 相談は、フリーダイヤル(0120・050・593)で平日の午前9時~午後6時などに受け付けているほか、メール(sos@sumakoma.jp) でも可能。

 詳しい情報は、ホームページ(https://sumakoma.jp/)で確認できる。

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