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歌人 穂村弘さん

一病息災

[歌人 穂村弘さん]緑内障(4)診断から17年、見えない箇所は増えたが…「怖いことにも慣れるもの」

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[歌人 穂村弘さん]緑内障(4)「今ここに存在」実感

 緑内障と診断されてから17年が過ぎた。「失明は怖い。でも、人間て怖いことにも慣れるものですね」。検査をすると見えない箇所が増えてはいるけれど、とにかく目薬をちゃんと差そうとだけは思う。予備をかばんに入れておいて、旅先にも忘れないように気をつけている。

 年齢を重ねて、友人との会話も、いつのまにかそれぞれの病気の話になっていることが増えた。

 少し前から「自分が死ぬとき、もっとしておけばよかったと思うことは何か」を想像することがある。結論は、お弁当とお茶を持って、公園へ散歩に行き、本を読むこと。昨年からの新型コロナウイルスの感染拡大で、それを実行する機会が生まれた。

 「遠出できないので、地元をふらふらしてみると、どの公園にも同じような人が大勢いた」。自宅から放射状にあちこちに足を延ばした。公園にいると、「今ここに存在している」という実感がわいた。

 第一歌集「シンジケート」が、出版から31年目の今年、装丁も新たに講談社から刊行された。歌集の新装版刊行は異例のことだ。

 緑内障になって、いやおうなく人生の残り時間を意識した。会社を辞め、書く仕事に専念するきっかけになった。「食べられなくなることもなく、結果的には良かったんじゃないかと思う」と話す。「でも、ひとに、神様がいい機会をくれたね、なんて言われるのはいやだな」と笑った。

(文・小屋敷晶子、写真・田村充)

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