第26回口腔保健シンポジウム
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【第26回口腔保健シンポジウム】(2)生活改善へ自己チェック
平野 浩彦氏

80歳で20本以上の歯を残そうという「8020運動」は約30年前、1989年にスタートしました。当時の日本は、平均寿命が大体80歳。20本とは、大抵のものが食べられる歯の本数です。生涯にわたって口からおいしく召し上がっていただきたいという、歯科医師の思いを込めた運動でした。
当初、80歳で20本の達成者の割合は1割にも満たない約7%でしたが、2016年の統計では、半数を超えています。しかし、多くの歯を残せても、「噛みにくい」人の割合はけっして少なくありません。今度はこうしたオーラルフレイルを防ぐため、口が衰える経緯を考えてみました。
口の機能が衰えて「噛めない」と感じ始めると、つい軟らかいものを食べるようになり、咀嚼 機能が衰える。そうした負の連鎖が回り始めます。その連鎖の末、食欲の低下を招き、さらには全身の栄養状態に問題が生じてくるのです。
新型コロナで、会食などの機会が減り、生活の範囲が狭まることは、オーラルフレイル、さらに全体の心身の機能低下につながりかねません。その入り口となる口の機能の衰えの危険性を、セルフチェック表で調べてみることも重要です。
オーラルフレイルを防ぐトレーニングを続けると、口の機能だけでなく認知機能まで改善するという報告もあります。口の機能の状態をきちんと認識し、予防につなげるには、日々の歯のケアとともに、かかりつけの歯科医院で定期健診を受けることも重要です。歯科医院では、感染症の対策をきちんと行っています。3か月に1回、半年に1回でもいいので安心して足を運んでほしいと思います。
◇ひらの・ひろひこ 1990年、日本大学松戸歯学部卒業。東京都老人医療センター医長を経て、2020年に東京都健康長寿医療センター歯科口腔外科部長・研究所研究部長。オーラルフレイルの第一人者。
参考になるウェブサイト
・日本歯科医師会「口腔体操でオーラルフレイル予防」(日歯8020テレビ)
https://www.jda.or.jp/tv/97.html
・サンスター オーラルフレイル情報サイト
https://jp.sunstar.com/oral-frail/
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