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国の支援金を市に差し押さえられ…50歳元飲食店主 コロナ禍の廃業、困窮は自己責任?

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 「血も涙もない。何とかなりませんか」。先日、困惑気味の女性(79)から社会部に電話がかかってきました。

 飲食店を経営していた息子さんがコロナ禍で廃業した上、預金全額を大阪市に差し押さえられたといいます。

 「このままでは生活できません」とただごとではない様子。事情を聞くため、息子さんを紹介してもらいました。

支援金差し押さえ自己責任?

ミナミの街を歩く譲二さん。「街の活気が失われている」と嘆く(大阪市中央区で)

 待ち合わせた喫茶店に現れた譲二さん(50)(仮名)は疲れ切った表情でした。

 譲二さんは、20歳代から大阪・ミナミのパブで働き、10年前、経営を引き継ぎました。15人の従業員を雇用し、経営は順調だったそうです。

 ところが、昨年4月の最初の緊急事態宣言で休業し、5月まで売り上げはゼロに。その後も売り上げが激減する中、借金で従業員の給与や賃料を賄っていました。しかし、年明けからの2度目の宣言で再休業し、3月に廃業を選択しました。

 譲二さんは、大学生の長女(20)と2人暮らし。店の残務処理をしながら、コロナで収入が減った人に国が無利子で生活資金を貸し出す特例貸付制度の「総合支援資金」を申し込み、やりくりをしていました。しかし、5月、43万円あった預金がなくなり、通帳に「サシオサエ」との文字が記されていました。うち20万円は、5日前に振り込まれた総合支援資金でした。

 譲二さんは過去に住民税を滞納し、2年前から大阪市に分割納付していました。しかし、昨秋に払えなくなっており、その差し押さえでした。

 譲二さんはその後、総合支援資金の追加分の振り込みを受けましたが、まだ滞納は残っています。市からは、全額を納付しなければ自宅も差し押さえると言われています。

 仕事はまだ見つからず、譲二さんは「滞納した自分に責任がある。でもこんな状況になるなんて想像できなかった」と途方に暮れています。

 コロナ禍で、納税には猶予制度が設けられています。また、国税庁は、総合支援資金などの差し押さえは慎重に検討するよう通知しています。困窮する人を支える緊急的な資金という位置付けだからです。

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 しかし、いったん銀行口座に入るとお金に色はありません。大阪市の担当者は「個別事案の説明はできない」とした上で「差し押さえるのはあくまで預金。猶予の手続きがなく、督促しても支払わない場合は実施する」と話します。

 一方、譲二さんは「担当者に生活を立て直すまで待ってもらうよう頼んでいた」と話し、猶予制度の説明や督促はなかったと主張します。

 納税は国民の義務です。苦しくても納付している人はいます。譲二さんにも非はあるでしょう。でも、その窮状を聞くにつけ、私は釈然としない思いが拭えません。

 コロナ禍の収束の見通しは立たず、専門家の間では、これまでギリギリで踏ん張っていた人が困窮に陥ると懸念されています。「自己責任」で済ませていいと思えません。

 みなさんの周囲で、生活に困窮している人はいませんか。情報をお寄せください。その声を社会に届け、解決策を探りたいと考えています。

今回の担当は

 上田友也(うえた・ともや) 労働問題や貧困問題をテーマに取材。親族がコロナ禍で一時失業し、影響の深刻さを肌で感じている。

身近な疑問や困り事、記事への感想や意見を寄せて下さい

 〒530・8551(住所不要)読売新聞大阪本社社会部「言わせて」係

 iwasete@yomiuri.com

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