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今井一彰「はじめよう上流医療 あいうべ体操で元気な体」

健康・ダイエット・エクササイズ

30歳代なのに肺は90歳代!? あなたの肺年齢は?

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30歳代なのに肺は90歳代!? あなたの肺年齢は?

 新型コロナウイルス感染症では、人工呼吸器やECMO(体外式膜型人工肺)が一躍脚光を浴びました。高齢者が肺炎をこじらせて重篤化し、呼吸器につながれて治療を受ける様子が繰り返し報道されました。

 血管や筋肉、記憶力など、私たちの心身は残念ながら着実に老化していきます。これは呼吸をする肺も同じです。その肺の老化度合いを示すのが肺年齢です。

1秒間にどれだけの息を吐けるか

 肺年齢とは、1秒間に吐ける息の量(1秒量といいます)から、自分の呼吸機能を知る目安となります。この1秒量は性別・年齢・身長によって異なり、20歳代をピークに加齢とともに減少していきます。これを計るにはスパイロメーターという装置を使います。

 一度は検査したことがある人も多いでしょう。若いから新型コロナも大丈夫と思っていても、肺年齢が実年齢よりもずっと老化していたらどうでしょうか。最近では「肺活」といって呼吸力を高めたり、肺の機能を保ったりすることも盛んになってきました。

30歳代なのに肺年齢は90歳を超えていた

 30代後半のNさん。受診したときの表情は、暗く落ち込んでいました。それまで、よく風邪を引き入院することもありましたし、胸痛や息苦しさが続き、とうとう気管支ぜんそくと診断されました。その際に告げられた肺年齢にショックを受けて、「改善できることはないか」と相談に見えたのです。

 なんとその肺年齢は90歳代。実年齢とは50歳以上かけ離れています。「このままでは肺が壊れてしまうかもしれない」、そう心配になるのはごく自然な感情です。肺年齢のショックから立ち直れず、同居のパートナーは看病のために退職を決意したというほどでした。

 幸いにして、気管支ぜんそくに対して副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)吸入治療が開始され、肺年齢は実年齢近くに戻りました。それでも動悸(どうき)や息苦しさはあまり改善されないということでした。肺の機能は改善しても息苦しさは消えない、という状態はよくあるものです。

口呼吸から気管支ぜんそくが発症することも

 Nさんの表情は、一見して口が開き気味で、唇は乾燥していました。これは視診における口呼吸判断の重要なポイントです。息苦しくて、たくさんの空気を吸おうとしてさらに口呼吸が悪化してしまうのです。実はこの口呼吸、気管支ぜんそくを引き起こしてしまいます。

 京都大学の調査では、口呼吸を自覚している人は鼻呼吸の人と比べると、2倍気管支ぜんそくになりやすいことが分かっています。それにアレルギー性鼻炎が加わると、なんと4倍も気管支ぜんそくになりやすいのです。

 Nさんにそのことを告げ、多少苦しくても鼻で呼吸する取り組みをすること、あいうべ体操をして舌が上あごの天井部分に着くように意識することを伝えました。

投薬に加え、鼻呼吸指導 肺年齢が50歳以上も若返り

 そうすると徐々に息苦しさや動悸も改善し、風邪を引くこともなくなりました。調子を見ながら吸入薬を減らしていき、投薬開始1年後にはやめることができました。中止後しばらくして肺年齢を計ると、実年齢よりも若くなっていたのです。なんと今度は50歳以上も肺が若返りました。

 コロナウイルスの影に隠れて流行したRSウイルス肺炎や肺の真菌感染症(カビ菌)など、呼吸器を冒す病気はたくさんあります。一説には私たちは1日に1000個以上のカビの胞子を吸い込んでいるといいます、そしてそれらに対する有効な治療薬も、未だたくさんあるわけではないのです。新型コロナウイルスに感染すると、大気汚染がある地域では重症化しやすくなることも分かっています。肺の老化を食い止め、できるだけきれいな空気を取り込みたいものです。

メダリストには気管支ぜんそくが多い?

 今年2021年に1年遅れで開催された東京オリンピック、一時は開催そのものも危ぶまれましたが、多くの日本人選手の活躍で盛り上がり、様々なドラマが生まれました。この強靱(きょうじん)な体を持つオリンピック代表選手、特にメダリストにおける吸入薬で治療を受けている気管支ぜんそくの有病率は、なんと12%以上と普通の人の3倍程度も高いのです。イギリスの報告では、エリートアスリートで呼吸器に問題がある選手は実に80%と報告されています。※

 運動誘発性ぜんそくともいわれますが、激しく長時間に渡る運動、屋外での練習やランニングによる大気汚染物質の曝露などで引き起こされます。これには口呼吸が大きく関わっています。口呼吸によって気管支収縮が起こってしまうのです。これは鼻呼吸に切り替えることによって抑制されるのですが、激しい運動では大量の空気を吸い込む必要があるために、どうしても口呼吸にならざるを得ません。これがエリートアスリートの高率な気管支ぜんそく有病率につながっていると思われます。

 Nさんも息苦しさから口呼吸になり、さらに気管支ぜんそくを悪化させ、肺年齢を衰えさせてしまうという悪循環に陥っていました。普段意識していない呼吸経路を見直すことにより肺年齢改善につながれば、体も心も楽になっていきますね。

 肺年齢はスパイロメーターのある医療機関で測ることができますから、気になる人はチェックしてもらってはいかがでしょうか。(今井一彰 みらいクリニック院長・内科医)

※The World Anti-Doping Code: can you have asthma and still be an elite athlete? June 2016Breathe 12(2):148-158

The benefits of a systematic assessment of respiratory health in illness-susceptible athletes

Eur Respir J. 2021 Jun 24;57(6)

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今井 一彰(いまい・かずあき)

 みらいクリニック院長、相田歯科耳鼻科内科統括医長

 1995年、山口大学医学部卒、同大学救急医学講座入局。福岡徳洲会病院麻酔科、飯塚病院漢方診療科医長、山口大学総合診療部助手などを経て2006年、博多駅近くに「みらいクリニック」開業。日本東洋医学会認定漢方専門医 、認定NPO法人日本病巣疾患研究会副理事長、日本加圧医療学会理事、息育指導士、日本靴医学会会員。

 健康雑誌や女性誌などに寄稿多数。全国紙、地方紙でも取り組みが紹介される。「ジョブチューン」(TBS系)、「林修の今でしょ!講座」(テレビ朝日系)、「世界一受けたい授業」(日本テレビ系)、「ニュースウオッチ9」(NHK)、「おはよう日本」(同)などテレビやラジオの出演多数。一般から専門家向けまで幅広く講演活動を行い、難しいことを分かりやすく伝える手法は定評がある。

 近著に「足腰が20歳若返る足指のばし」(かんき出版)、「はないきおばけとくちいきおばけ」(PHP研究所)、「ゆびのば姿勢学」(少年写真新聞社)、「なるほど呼吸学」(同)。そのほか、「免疫を高めて病気を治す口の体操『あいうべ』」(マキノ出版)、「鼻呼吸なら薬はいらない」(新潮社)、「加圧トレーニングの理論と実践」(講談社)、「薬を使わずにリウマチを治す5つのステップ」(コスモの本)など多数。

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