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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

動かないと思ったが…6か月女児が歩行器のまま階段を13段落ち頭骨骨折 事故はなぜ起きた?

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 これまで、まだ歩けない赤ちゃんの転落についてお話ししてきましたが、歩けるようになると、あちこちで転倒・転落するようになります。今回は、階段からの転落についてお話しします。

動かないと思ったが…6か月女児が歩行器のまま階段を13段落ち頭骨骨折 事故はなぜ起きた?

イラスト:高橋まや

1歳以上の幼児に多い階段からの転落

 東京消防庁の「 救急搬送データからみる日常生活事故の実態 」(2018年)から、各年齢別に、どこから落ちたのかを、多いものから順に挙げてみましょう。

  • 0歳: ベッド(135人)、人(67人)、ソファ(57人)、階段(45人)、ベビーカー(42人)
  • 1歳: 階段(148人)、いす(95人)、ベッド(54人)、ソファ(43人)、自転車の補助いす(33人)
  • 2歳: 階段(126人)、自転車の補助いす(86人)、いす(72人)、人(31人)、ベッド(27人)
  • 3~5歳: 階段(125人)、自転車の補助いす(85人)、いす(75人)、ソファ(53人)、滑り台(53人)

 救急搬送されたデータをまとめたものですので、重症度が高い事例です。それぞれの年齢の発達に伴って、転落しやすい状況は変化していきます。幼児では、階段からの転落が最も多いことがわかります。これらの搬送人数や順位は、毎年、ほとんど変わりがありません。

まだ移動できないと思っていたが…

 こうした階段からの転落について、資料「 ベビーゲート等の使用に関する安全確保 」を中心にお話しします。

 乳児の時期は、どこに行くにも大人に抱かれているので、大人が転倒すると乳児は転落して受傷します。家庭の階段で大人が乳児を抱いていると、視界が遮られたり、手すりをつかめなかったりするため、転落する危険性が高まります。0歳の「人からの転落」の一部は、階段で起こったと思われます。

 階段での転落は、「タイツや靴下をはいていて滑る」「踏み外す」「バランスを崩す」「つまずく」「引っ掛ける」など、いろいろな原因によって起こります。

事例1 :6か月女児。保護者と4歳の兄は台所で夕食の準備をしていた。夕方になるとぐずるので歩行器に乗せていた。歩行器に乗せると足は床につくものの、移動はできないと思っていた。ところが、目を離した隙に、女児は階段13段を歩行器のまま転落。歩行器に座った状態でひっくり返っていた。意識はあった。急性硬膜外血腫、後頭骨骨折のため8日間入院。階段にベビーゲートは設置していなかった。

 まだ移動できないと考え、階段からの転落防止策をしていなかったのだと思われますが、事故後、足をついて後ろに移動できていたことがわかりました。東京消防庁の0~1歳児のデータ(2014~18年)では、住宅内の階段からの転落で、ベビーゲートなどが使用されていない状況で起こった事故は795件報告され、ベビーゲートが関連した転落に比べ、症状が重い傾向がありました。

 子どもが移動できるようになると、階段からの転落を心配して、ベビーゲートを設置する家庭が多くなります。

事例2 :1歳11か月男児。自宅の2階から1階までの階段を14段転落した。2階に設置したベビーゲートは、かぎをかけ忘れていた。意識消失や嘔吐(おうと)はなく、右頬部(きょうぶ)・左後頭部打撲傷、右頸部(けいぶ)皮下出血・血腫があり、経過観察のため2日間入院した。保護者は目撃していた。

事例3 :1歳10か月女児。女児は自宅の2階にいた。2階の階段に設置したベビーゲートを本人が倒した音に、2階にいた保護者が気づき見に行った。5段目で頭をぶつけ、7段目で止まった。意識消失や嘔吐はなく、右まぶたの傷を縫合処置してもらい、通院治療となった。

 東京都が調べたところ、2014年からの5年間に、ベビーゲートに関連する事故は123件ありました。生後6か月から11か月が19%、1歳が44%、2歳が25%で、3歳未満が88%を占めていました。男児が71%で、女児の2倍以上となっていました。

 ベビーゲートが設置されていたのは、階段上が最も多く67%で、その他、階段下、台所、居室、玄関近くの廊下、ベランダなどに設置されていました。

 事故の発生状況として、ベビーゲートが直接関連した事故と、ベビーゲートを通過した先で発生した事故に分けると、前者は44件(36%)、後者は79件(64%)でした。前者の例には、「ベビーゲートに寄りかかって外れた」「ベビーゲートにぶつけた」「はさんだ」「つまずいた」などがありました。後者では、「ベビーゲートを閉め忘れた」「ロック解除」「ベビーゲートを乗り越えた」などがあり、このうち閉め忘れが58件で約半数を占めていました。

 ヒヤリ・ハット調査でも、上記の事例と同じような階段からの転落例が最も多くなっていました。帰省先など、自宅とは異なる住まいでも起こっていました。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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