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新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行

医療・健康・介護のコラム

「バリチョイ」な世の中を楽しもう 病気でもたくましく生きる キッズキャンプで子どもたちを支援

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子どもたちを孤独にさせないために

バリチョイ」な世の中を楽しもう 病気でもたくましく生きる キッズキャンプで子どもたちを支援

キッズキャンプのコンセプトは「僕たちの可能性は無限大」

 近年は若いうちに診断がつくことが増え、子どもの患者とその親の参加も多い。キッズ対象のキャンプを開催するなど、子どもや親同士のつながり作りも意識している。

 「子どもたちは孤独になりやすいんですよね」

 彼自身の人生を振り返っての言葉である。

 学校では、障害についてはなかなか理解してもらえない。家族には、関係が近すぎて言えないこともある。インターネットを使いこなせる年代でもない。

 そういった状況が、子どもの孤独を生み出していると言う。キッズキャンプでは、子どもだけのグループによる時間を設け、大人抜きで話ができる時間を大切にしている。

 私も生まれつきの障害があり、子どもの頃に障害者団体のキャンプに参加していた。毎年、同年代の仲間と語り合うテント内の時間はとても貴重だった。

社会を多様性に適合させたい

 現在の医療は、患者一人ひとりの病気を治すという観点が強い。

 そうではなく、彼は、「障害者や患者を変えるのではなく社会を変えたい」「社会を多様性に適合させたい」と考えている。

 それは、単に、バリアフリーの設備が整えばいいという話ではない。

 「バリチョイ」

 彼は、目指す社会の姿をそう言葉にした。

 バリアは少しならあっていい。それをどうしたら解決できるかを、主体的に考え、そしてそれを楽しむのだという。

 バリアが「チョイ」と残っている状態。そして、いくつかの考えの中から、主体的にバリアを「チョイス(選択)」する。

 バリアを障害としてではなく、面倒くさいが、主体的に解決すべきことと捉える彼の発想は、CMT病の方だけではなく、私たち誰しも必要なことだ。

 それらをさらに楽しく、「チョチョイのチョイ」と、越えていってほしいという。

 楽をすることが、楽しいとは限らない。

 「将来は、バリチョイを楽しめるキャンプ場を作りたいんですよ」

 「バリチョイ」のキャンプ場。そこでは、子どもたちが今までできそうでできなかったことが体現できる。障害がある、病気を持っているという区分けではなく、誰にとっても「バリチョイ」の環境を作りたい。

 作業療法士として活動しながら、少しずつ進むであろう病気を受け入れ、杖(つえ)をうまく使いカフェを後にする彼の後ろ姿からは、将来を強く見据えるたくましさを感じた。(鈴木信行 患医ねっと代表)

(写真はいずれも山田さん提供)

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鈴木信行(すずき・のぶゆき)

患医ねっと代表。1969年、神奈川県生まれ。生まれつき二分脊椎の障害があり、20歳で精巣がんを発症、24歳で再発(寛解)。46歳の時には甲状腺がんを発症した。第一製薬(現・第一三共)の研究所に13年間勤務した後、退職。2011年に患医ねっとを設立し、より良い医療の実現を目指して患者と医療者をつなぐ活動に取り組んでいる。著書に「医者・病院・薬局 失敗しない選び方・考え方」(さくら舎)など。


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