新・のぶさんのペイシェント・カフェ 鈴木信行
ここは東京のとある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、毎月上下2回に分けてお届けします)
医療・健康・介護のコラム
シャルコー・マリー・トゥース病 末梢神経の異常で手足の筋力や感覚が徐々に低下する難病
ここは、ある下町にあるという架空のカフェ。オーナーののぶさんのいれるコーヒーの香りに誘われ、今日もすてきなゲストが訪れて、話が弾んでいるようだ。(ゲストとの対話を、上下2回に分けてお届けします)

【今月のゲスト】
山田隆司(やまだ・たかし)さん
4歳頃にシャルコー・マリー・トゥース(CMT)病を発症。「疾病・障害体験って生かせないかな?」と作業療法士を目指す。19歳から当事者活動を始め、患者会「CMT友の会」代表やCMT研究班の協力者を務める。「当事者の主観性」と「セラピストの客観性」の両方を活用する「当事者セラピスト」として、当事者~支援者~社会の懸け橋になるべく挑戦中。精神・小児発達領域での臨床の他、研究や教育、セミナーやイベント企画など幅広く活動している。将来はバリチョイなキャンプ場のオーナーになりたい。
・CMT友の会 http://www.j-cmt.org/
CMT友の会代表の山田隆司さん(上)
残暑の厳しい日が続く。カフェの店内は朝から強く冷房を入れているが、私はコーヒーを淹(い)れるたびに、湯の熱気と顔にかかる湯気で、汗がにじみ出る。
カフェの扉が開いた。外からの強い日差しと暑い風とともに、山田隆司さんが入店してきた。
体格はがっちりしているが、下半身や手の先に障害があり、歩くときにはクラッチという杖(つえ)を使っている。41歳を迎え、人間としてのやさしさも感じる。
「こんにちは。とうとう来ちゃいました」
これまでに、他の場所では数回お会いしていたので、このカフェにもお越しいただけるよう声をかけていたが、今日それが実現した。
「シャルコー・マリー・トゥース病」
彼の病名である。
この病気を解明した3人の医師の名前が並べてつけられた病名だと、以前教えてくれた。頭文字を取って「CMT病」と呼ぶそうだ。
足の変形のために4度の手術
爽やかな笑顔とともに、コーヒーをご注文された。
CMT病は遺伝子が原因の病気だ。手足など末梢(まっしょう)の神経から、徐々に機能が弱くなるそうだ。それに伴い、筋力や感覚が落ちたり、変形による痛みを生じたりしながら、少しずつ進行していく。
神経内科の分野では広く知られている病気であり、研究も数多く行われている。しかし、治療法は見つかっていない。
足の変形の症状から、整形外科を受診する患者も多いという。神経内科との連携が重要であるらしい。
病気のことを尋ねると、彼はいつも、快くいろいろと教えてくれる。
4歳の頃にはすでに足の変形があったが、何の病気であるかは分からなかったという。
体の成長とともに、足の変形が増してきたため、手術が必要となった。小学2年、3年、さらには中学生、専門学校生の頃と、手術を4回も重ねた。
私も、二分脊椎という生まれつきの病気があり、幼少期や小学生の頃に手術を重ねた。今となっては思い出だが、当時は精神的にも追い込まれていたことを思い出した。
一方、山田さんの思い出は、私とは違ったようだ。
体が思うように動かない、能力がないという機能的な部分は、子どもながらにも受け入れていたそうだ。しかし、友だちと比べられたり、できないことを突き付けられたり、自分に対する周りの大人や友だちの接し方がつらかったという。
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