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Dr.イワケンの「感染症のリアル」

医療・健康・介護のコラム

抗体カクテル療法 新型コロナ軽症者の重症化を防ぐ 医療崩壊を食い止めるカギに

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もはや緊張感の薄れた緊急事態宣言

抗体カクテル療法 新型コロナ軽症者の重症化を防ぐ 医療崩壊を食い止めるカギに

 本稿を執筆しているのは8月17日、兵庫県は20日から再び緊急事態宣言に突入することになりましたが、もう予定調和の宣言が繰り返されるだけなので、周囲には何の緊急事態感も緊張感も漂っていません。こんなグダグダな政策でよいのでしょうか。

 5月の第4波のときもそうでしたが、巨大なコロナの波が来て大変なのは医療機関です。が、もっと大変なのは保健所です。

 保健所の業務が激増し、自宅待機している感染者が激増し、その待機患者の健康観察などに保健所職員が忙殺され、そこで感染者周囲の濃厚接触者の探索が不可能になり、さらに感染者激増が助長される……という悪循環です。

 保健所の疲弊は、もう去年から何度も何度も指摘されているところです。そこで保健所のマンパワーの増大とか、日本の役所はすぐに「足し算」の論理を使いがちです。

https://www.mhlw.go.jp/content/10901000/000746019.pdf

 が、負担の大きな保健所業務に手を挙げて、わざわざ火中の栗を拾ってくれる人もそう多くはないでしょう。保健所長のポストも空いている場所があちらこちらに見られます。

保健所の負担激増 所得確認で事務作業さらに煩雑に

 やはり、こういうときは足し算だけではなく引き算の論理も必要です。必要ない保健所の業務を厚生労働省などが減らしてあげれば、その負担は大きく減ります。

 例えば、HIV、梅毒、結核周りの書類には、非常に無駄、無意味なものが多いです。厚労省は三度のご飯よりも無駄な書類が好きだからです。こうしたものは、このコロナ禍を奇貨として、大なたを振るってバッサバッサなくしていかねばなりません。

 新型コロナの入院費用は原則、公費負担となります。それはいい。が、どこかの頭の回転の速い、しかし問題の全体像を把握できない残念な官僚が、変なルールを作りました(財務省なのか、厚労省なのかは知りませんが)。世帯員の市町村税の総所得割額が56万4000円を超える場合は月額2万円を上限として一部負担があるのです。

 で、この負担があるかどうかを確認するために、保健所は「全ての入院患者」から所得証明を得て、負担金が出ないかどうかを確認せねばなりません。この確認をして病院に医療費が入ってくるのですが、過労死ラインをとうに超えていそうな保健所に、さらにこんな事務作業を強いるのは人的コストを全く無視した愚策としかいいようがありません。

 ちっちゃいところばかりが気になってビッグピクチャーが見えなくなってしまう、というのは日本の役人アルアルの失敗のパターンです。まあ、感染症の医者にもこういうタイプ、多いですけどね。

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岩田健太郎(いわた・けんたろう)

神戸大学教授

1971年島根県生まれ。島根医科大学卒業。内科、感染症、漢方など国内外の専門医資格を持つ。ロンドン大学修士(感染症学)、博士(医学)。沖縄県立中部病院、ニューヨーク市セントルークス・ルーズベルト病院、同市ベスイスラエル・メディカルセンター、北京インターナショナルSOSクリニック、亀田総合病院(千葉県)を経て、2008年から現職。一般向け著書に「医学部に行きたいあなた、医学生のあなた、そしてその親が読むべき勉強の方法」(中外医学社)「感染症医が教える性の話」(ちくまプリマー新書)「ワクチンは怖くない」(光文社)「99.9%が誤用の抗生物質」(光文社新書)「食べ物のことはからだに訊け!」(ちくま新書)など。日本ソムリエ協会認定シニアワインエキスパートでもある。

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