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赤ちゃんに目立つ頭蓋内の出血…止血に必要なビタミンK 「生後3か月まで週1」で投与

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 生後間もない赤ちゃんは、止血に必要な栄養素「ビタミンK」が不足しがちで、薬で補う必要があります。日本産婦人科医会などは今春、「生後3か月まで、1週間ごとに投与するのがより確実な方法」とする見解を出しました。(中島久美子)

止血に必要

 出血を止めるには、血を固める10種類以上のたんぱく質が必要です。このうち4種類のたんぱく質は肝臓で作られる際に、ビタミンKが欠かせません。

 ビタミンKは、人工乳(ミルク)に多く添加されていますが、母乳に含まれる量はわずかです。こうしたことなどから、赤ちゃんは出血しやすくなります。

 特に、頭蓋内での出血が目立ち、命を落としたり寝たきりになったりする恐れがあります。厚生省(当時)研究班が1980年度に実施した初の全国調査では、ビタミンK不足による乳児の出血は出生10万人あたり18人でした。

 その後、予防法として赤ちゃんへのビタミンK投与が普及しました。2005年の調査では、出血を起こす赤ちゃんは、同1・9人に減りました。

 投与には通常、シロップ剤が使われます。服用方法は、主に〈1〉出生直後、生後1週間(産科退院時)、1か月健診時に看護師らが投与する「3回法」、〈2〉出生直後から生後3か月まで1週間ごとに計13回飲ませる「3か月法」――の2通りです。

 日本小児科学会が今年1月に公表した実態調査によると、3回法を実施する医療機関の方が多数です。調査に回答した1175施設のうち、3回法は56%、3か月法は22%でした。

 この調査では、15~17年の3年間に、ビタミンK不足で赤ちゃんが頭蓋内出血を起こしたケースが、全国で少なくとも13例あったことも分かりました。投与方法は、「3回法」11例、「生後1か月までに2回」と「不明」各1例でした。3か月法の赤ちゃんはいませんでした。

 13例中11例は、ビタミンK不足を引き起こす胆道閉鎖症などを患っていました。いずれも出血を起こすまで病気が見つからなかったケースとみられます。

退院後は家庭で

 この結果を受け、日本産婦人科医会と日本産科婦人科学会は、「3か月法の採用の検討が望まれる」とする見解を出しました。同医会常務理事の鈴木俊治さん(日本医大産婦人科教授)は「健康な赤ちゃんならば、3回法で十分でしょう。しかし、出血を起こす病気が見つかりにくい赤ちゃんがいることや、3か月法では出血例がなかった点を重く受け止めました」と話します。

 3か月法の場合、出産して退院した後は家族が投与します。7月に長男を出産した福岡県の女性(29)は毎週火曜日に、哺乳瓶の乳首をくわえさせて、シロップ剤を少しずつ飲ませています。女性は「難しくありません」と言います。

 産業医大(北九州市)小児科講師の荒木俊介さんは、「母乳やミルクを飲める赤ちゃんなら、家庭でも安全に与えることができます」と説明します。日本産婦人科・新生児血液学会監事の白幡聡さんは、「出血で命を落とす赤ちゃんを一人でも減らすには、3か月法の普及が急がれます」と話しています。

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