文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー

医療・健康・介護のコラム

「ルールに合わせる」のか「ルールを変える」のか…パラリンピックから見える「障害」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 ヨミドクター読者の皆さん、サービス介助士アドバイザーの平野恵です。東京オリンピックは、コロナ禍による異例の開催となりましたが、メダルラッシュが続き、大いに盛り上がりましたね。そして、パラリンピックも開幕しました。パラリンピック種目には視覚障害者向けの競技も多数ありますが、今回は、パラリンピック競技以外の視覚障害者スポーツについて紹介しながら、障害の捉え方について考えていきたいと思います。

「ルールに合わせられないとスポーツはできないんだ」と…

「ルールに合わせる」のか「ルールを変える」のか…パラリンピックから見える「障害」

サウンドテーブルテニスのラケット(写真提供:ニッタク)

 私が初めて視覚障害者向けのスポーツに触れたのは、大学生の時です。それまでは、特別支援学校に通っていましたが、視覚障害者は私一人だったため、いわゆる“通常のスポーツ”を、私が他の学生に合わせて行っていました。

 ルールはそのままですから、バレーボールやバスケットボールなどの球技では、ボールやチームメートがどのような動きをしているのか分かりません。それでも構うことなく、ボールは飛んできます。結局、一度も取ることができず、何度もチームを負けさせてしまい、最後には、先生から「得点係」をするよう言われてしまいました。

 水泳では、泳ぎ方を口頭で説明されても分からなかったため、今でも、泳ぐことができるのは何とか習得した平泳ぎのみです。このようなことが何度も繰り返されるうちに、「視覚に障害があると、スポーツはできないんだ」「ルールに合わせることができないとスポーツはできないんだ」と、ネガティブなイメージを抱くようになりました。

 その後、視覚障害者の教育に特化した大学に入学しましたが、体育の授業があることを知り、「できないスポーツをまたやらなければならないのか」というあきらめの気持ちと、「この大学なら、何かできるスポーツがあるかもしれない」という期待感を抱え、授業にのぞみました。そこで出会ったのが「サウンドテーブルテニス」でした。

卓球台の上を転がす「サウンドテーブルテニス」

サウンドテーブルテニスの特徴(提供:ニッタク)

 サウンドテーブルテニスは、盲人卓球とも呼ばれる視覚障害者向けの卓球です。試合のルールは通常の卓球とほとんど同じですが、いくつかの工夫がなされています。

  1. ボールは卓球台の上を転がす
     通常の卓球は、ネットの上をバウンドさせて打ち合いますが、サウンドテーブルテニスではバウンドは禁止。卓球台の上で転がし、ネットの下を通過させます。
  2. 何をするか、声かけをして始める
     サーブ側が「いきます」、守る側が「はい」と言ってから、試合をスタートします。この声かけをすることによって、相手の状況を把握することができます。
  3. 球の中に鈴が入っている
     サウンドテーブルテニスの球の中には、鈴が入っています。これにより、転がしてラリーをする際、球の位置を確認することができます。
  4. ラケットの打球部分にラバーが付いていない
     通常のラケットとは異なり、打球部分にラバーは付いていません。ラバーが付いていると、打撃音が吸収されてしまうからです。打球音を聞くことにより、相手が打ったことが分かります。
  5. アイマスクの着用
     選手は、全員アイマスクを着用します。視覚障害者も、見え方は全盲、弱視などそれぞれですから、見え方を同じにします。もちろん晴眼者(視覚に障害のない人)も、アイマスクをすることで同じ環境でプレーできます。
  6. 継ぎ目のない卓球台を使用する
     折り畳み式で継ぎ目のある卓球台では、そこを球が通る際にバウンドしてしまうため、継ぎ目のない卓球台を使用します。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

carefit-togashi_prof

街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナー

冨樫 正義(とがし・まさよし)

冨樫 正義(とがし・まさよし)
 1973年、埼玉県生まれ。桜美林大学大学院卒(老年学研究科修士号)。東洋大学国際観光学部非常勤講師。法律事務所、不動産関係会社、人事コンサルタント、専門学校講師を経て、現在、サービス介助士、防災介助士、認知症介助士などを認定・運営する団体「公益財団法人日本ケアフィット共育機構」(0120‐0610‐64)のインストラクターとして、年間50社以上の企業対象研修を担当するほか、企業のバリアフリー・ユニバーサルデザインのコンサルティングも行う。

平野 恵(ひらの・めぐみ)

平野 恵(ひらの・めぐみ)
 視覚障害と軽度の移動機能障害がある。2歳から4歳まで盲学校幼稚部、その後、小学校から高校まで養護学校(現在の特別支援学校)に通い、高校まで車いすを使用して生活をしていたが、大学入学後の訓練を経て、現在では白杖のみで歩行している。日本ケアフィット共育機構事務局に勤務。サービス介助士アドバイザー。

街で障害のある人と出会ったら~共生社会のマナーの一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事