がんのサポーティブケア
医療・健康・介護のコラム
がんの支持医療に漢方を 抗がん剤の副作用 全身倦怠感や食欲不振を改善 「活用ガイド」も作成
一剤で複数の症状に対応
――がんの支持医療に漢方を使うメリットは何ですか。
まず、漢方は一つの処方で、いくつもの症状を改善することができます。また、費用の面でも、医療機関で処方される漢方には保険が適用されますし、とても安価です。副作用も一般的には少ないと言えます。
さらに近年、倦怠感や食欲不振などの現代医学では対応できない症状に対して、漢方の効果が期待されていることも大きいです。
――逆に、短所は何ですか。
がんが進行して経口摂取ができない患者さんに対しては、使えません。ただし、そういった場合も、胃ろうから注入する方法などもあります。また、味やにおいが気になって飲めないという方もいらっしゃいます。その場合は、オブラートや服薬ゼリーを使うなどの工夫をします。
――抗がん剤との組み合わせで使えない場合はありますか。
この抗がん剤だからダメというものはありません。ただし、間質性肺炎を起こしやすい分子標的薬との併用の際には注意が必要です。
――免疫チェックポイント阻害剤などの新しいタイプの薬剤についてはどうですか。
ニボルマブの治療後に倦怠感を訴えた患者さんに対し、十全大補湯を処方して症状の改善につながった例を経験しています。今後、きちんとした臨床試験が必要ですが、十全大補湯はがんに対する免疫力を上げる作用があり、免疫チェックポイント阻害剤との併用にはメリットが期待されるのではと考えています。
西洋医学では対処できない患者の訴えに対して
――元雄さんは、もともと消化器内科がご専門ですが、漢方に興味を持たれたきっかけは何ですか。
1989年に漢方製剤メーカーのツムラ主催の第1回漢方医学セミナーに参加したのがきっかけです。臨床の各分野で高名な医師が診療に漢方を取り入れているのを知り、とても驚きました。
翌週にさっそく、消化器内視鏡検査で診断した慢性胃炎で「口が苦い」と訴えた患者さんに六君子湯(りっくんしとう)を処方したのが、最初の漢方体験です。
――それまでの日常診療を通じて何か思うところがあったということでしょうか。
がんの患者さんで、血液検査の数値には異常がないのに喉のつかえを感じるとか、おなかが張るといった訴えに対して、なすすべがなく困ったことがありました。そういった経験が、漢方に目を向けるきっかけになりました。
――最初は、消化器内科医として漢方を取り入れた?
はい。その後、金沢医科大学に移って本格的に腫瘍内科として肺がんや乳がん、原発不明がんの抗がん剤治療に従事するようになり、そこでも漢方を取り入れるようになりました。また英語論文として世界に発信してきました。
今では「漢方も」使っているというより、「漢方を」メインに使っているという感じですね。漢方処方から患者さんの姿がわかるようになりました。
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