がんのサポーティブケア
医療・健康・介護のコラム
がんの支持医療に漢方を 抗がん剤の副作用 全身倦怠感や食欲不振を改善 「活用ガイド」も作成
元雄良治・金沢医科大学名誉教授に聞く
がん患者の闘病を支えるがんの支持医療について専門家に聞く「がんのサポーティブケア」の第8回は、「漢方」がテーマです。漢方は医療の様々な分野で活用されていますが、がんの支持療法においてはどのように使われているのでしょうか。漢方を積極的に取り入れたがん医療を実践している金沢医科大学名誉教授で、日本がんサポーティブケア学会漢方部会長を務める元雄良治さんに聞きました。(聞き手・田村良彦)
――がんの支持医療において、漢方はどのように使われているのでしょうか。
たとえば抗がん剤の副作用でも、制吐剤のような薬剤で抑えられる症状は限られています。全身倦怠(けんたい)感や食欲不振、しびれなど、がんや治療に伴う様々な症状に対して、漢方を何とか利用できないかという試みは以前からありました。
研究面でも、かつては日本語での症例報告ぐらいしかなかったのが、近年は前向きのランダム化比較試験の研究結果が増え始めたことも、後押ししています。
――根治治療が望めなくなった後に使われるのではと誤解していました。
緩和ケアは、がんと診断された時から始まります。がんの診断を受けて精神的な落ち込みがみられる場合に漢方を使うことがあります。
また、手術の前に漢方を使うことで全身状態を良好に保って合併症を減らせることにもつながります。漢方は治療前から終末期まで、がん医療のあらゆる場面で使われます。
補中益気湯や十全大補湯など
――具体的に、どんな漢方がどんな症状に用いられますか。
補中益気湯(ほちゅうえっきとう)は、食欲不振や疲労感、全身倦怠感など、漢方で気虚(ききょ)と呼ぶ気力の低下がみられる状態に対して、外科手術の前後、放射線治療や抗がん剤治療の際にもよく用いられます。
また十全大補湯(じゅうぜんたいほとう)は、貧血や皮膚の乾燥などの血虚(けっきょ)と気虚が交じっている状態に対して用いられる漢方で、早くから研究も盛んで、進行がんの患者さんなどに多く使われてきました。
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