がん患者団体のリレー活動報告
医療・健康・介護のコラム
NPO法人 5years
「NPO法人 5years(ファイブイヤーズ)」は、1万5000人以上のがん経験者が登録する日本最大級のインターネットコミュニティーサイト「5years」を運営しています。団体の名前は、「5年生存率」にちなんで付けました。5年生存率は、がん患者にとって治療の指標となる数字で、大きな意味を持っています。「5年後、みんな元気に社会に戻っていてほしい」という願いを込めました。自分と同じ病を先に経験した人たちとインターネットでつながり、相談に乗ってもらい、生活課題を解決するインフラを提供することで、がん患者さんの社会復帰を支えています。

日本最大級のコミュニティーサイト「5years」
「希望」「仲間」「体験情報」を提供
アメリカにはインターネットを使った患者支援社会事業があり、社会の財産となっています。日本の患者支援の形を欧米レベルにまで引き上げたいとして、5yearsサイトを2015年に開設しました。
私たちは、がんという病を患った人たちには「希望」「仲間」「体験情報」の三つが必要と考え、サイトを通じて以下の二つを提供しています。
(1)がん治療の後、元気に社会に戻った人たちの情報
(2)先にがんを経験した人たちに相談に乗ってもらえる仕組み
元気になった人たちの情報は治療への「希望」となり、治療後の人生への「希望」になります。また、がん経験者たちに相談できる仕組みを通じ、「仲間」「体験情報」も手に入ります。
がん体験などをつづり、支え合う
具体的には、がん経験者たちがサイトに自分のプロフィルや治療歴、現在の状況などを登録できます。そして、会員登録すると、今年7月末現在、1万5000人以上の登録者の情報などを見ることができます。治療上や生活上の悩み、体験談や失敗談は、同じがん患者仲間にとって、とても貴重な情報です。
会員登録者は、がん体験者たちに相談できます。その相談内容と回答は公開されており、登録者は読むことができます。7月末現在、質問数は800件以上、回答数は4500件以上になります。
また、気の合う仲間同士で友達関係を作り、情報交換することもできます。そのようなつながりは7月末現在、2万2000組以上に上ります。
5yearsは、従来型の患者支援団体とは異なり、インターネット上のコミュニティーサイトです。だから、患者団体が存在しない地方からも参加でき、その恩恵が受けられます。また、入院中も病院からサイトにアクセスできますし、体調がすぐれない自宅療養中でも仲間たちとつながり、体験情報を手に入れることができます。



会員登録したがん体験者の声(サイトから)
事務局が体験者を取材するウェブ記事も
交流サイト以外に「5years PLUS(プラス)」というサイトもあります。5years事務局が体験者を取材して、がん闘病から社会復帰までの感動的なストーリーをウェブ記事で紹介しています。

闘病から社会復帰までのストーリーを紹介する「5years PLUS(プラス)」
患者仲間と実際に会えるイベント

東京都内で開かれたクリスマス会(2019年12月)
インターネットでつながった患者たちが実際に会えるイベント「マイヒーロー、マイヒロインに会おう!」を、毎年、東京と大阪で開催しています。
私たちは、命と向き合うがん患者さんにはロールモデル(手本)が必要だと考えています。厳しい治療を乗り越え、社会に戻った先人たちはロールモデルであり、自らが目指す将来像です。
5yearsでつながった自分にとってのヒーロー・ヒロインと会えるイベントを開催し、がん患者さんたちの社会復帰を後押ししています。
コロナ禍でも通常通り活動
コロナ禍により、集会型の患者支援活動が自粛、縮小、停止という残念なことになりました。
しかし、インターネットを駆使する5yearsは通常通り活動を継続しているため、これまで以上に活況となり、多くの患者たちの心のよりどころとして機能しています。
NPO法人 5years
代表の大久保淳一氏が、「元気になった今、自身のがん闘病当時に欲しかった支援の仕組みを作りたい」として2015年に活動を開始した。それは、がん患者たちのインターネットコミュニティーの創設である。
米国で画期的な患者支援事業と評されるインターネット上の患者コミュニティー「PatientsLikeMe」を訪れて学び、この団体を創り上げた。巨大なコミュニティーサイトに成長した今も、新たながん患者たちが登録。会員同士の情報交換や交流などを通して、患者の社会復帰を支えている。
ホームページ https://5years.org/
このコーナーでは、公益財団法人 正力厚生会が助成してきたがん患者団体の活動を、リレー形式でお伝えします。
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