わたしのビタミン
医療・健康・介護のコラム
「見えない障害」思いを歌に 高次脳機能障害のシンガー・ソングライター大川ちさとさん
22歳…「普通じゃない幸せ」
障害の影響で、思ったことをその場で言葉にするのが苦手です。でも歌っているときは、温めている思いを表現できます。
高校3年だった2016年秋に、地元・秋田県大館市のアイドルグループを卒業し、ソロ活動を始めて5年。これまでに20曲作りました。「普通じゃない幸せ」という曲で、これまでのことを歌っています。
「♪高次脳機能障害ってなんですか? 聞いたこともない 認知度が低すぎて きっと誰も知らないよね?」
障害がわかったのは高校2年のとき。ストレスで過呼吸を起こし、心療内科を受診したのがきっかけでした。小学3年のときに、急性リンパ性白血病にかかったのですが、その治療中に併発した脳 梗塞 の後遺症によるものでした。
授業で集中力が保てず、「今日は何曜日だっけ?」などと繰り返し聞いてしまいます。そのため、周囲に不思議がられたり、怒られたりして落ち込みました。
この障害は健常者との違いが見えにくく、「サボっている」と誤解されることもあります。当事者しか知らない悔しさ、もどかしさ、憤りを、多くの人に分かってほしいと思い、音楽活動を続けてきました。
幸い、音楽以外でも発信の機会をいただきました。外見から分かりにくい障害や病気のある人への配慮を求める「ヘルプマーク」というものがあるのですが、秋田県がホームページ上で協力を呼びかける動画に、一昨年から出演しています。7月下旬からは、県のテレビCMで障害者への理解を訴えています。
イベントや講演会で当事者の思いを語り、入院中の子どもたちを訪ねて歌ったことも。病気や障害にめげず、生きていてよかったという思いを伝え、「頑張って夢をかなえようね」と励ましてきました。
「道」という曲で、こう宣言しました。「♪自分の居場所をちゃんと見つけたの 私はここで歌って生きていく」
今年は結婚して環境も変わりました。そこで、新しい自分や支えてくれる夫を題材にした歌を作ろうと考えています。
これからも、突き通したい思いを精いっぱい伝えます。その姿が誰かの笑顔につながればうれしいです。(聞き手・野島正徳)
おおかわ・ちさと 1998年、秋田県大館市生まれ。高校生だった2015年6月~16年10月、秋田犬の里・大館にちなんだご当地アイドル「まちあわせハチ公ガールズ」で活動。卒業後は、同県内を拠点にソロで活動している。本名は藤田千里。
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