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子どものてんかん 発作が長引くと後遺症や命の危険も…口から注入する新薬 外出先でも簡便に

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 子どものてんかん発作が長引くと、後遺症が残ることや、命に関わることがあり、早めの対処が必要です。昨年秋、重い発作を抑える薬に、頬の粘膜に注入するタイプが加わりました。主治医の指示のもと、保護者が自宅や外出先で簡便に使えるのが特徴です。(安藤奈々)

発作5分以上

子どものてんかん重積…新薬 外出先で簡便に

 てんかん発作は、脳の神経細胞が興奮して起こります。5分以上続いたり、短い発作を意識が回復しないうちに繰り返し起こしたりする深刻な状態を「てんかん重積」と呼びます。

 原因には、難病のドラベ症候群などてんかん発作を起こしやすい病気だけでなく、乳幼児期に発熱をきっかけに起こる「熱性けいれん」や、細菌性髄膜炎、急性脳症などの感染症に由来するものもあります。てんかん重積を初めて起こす子どもは、年間約8000人いると推計されています。

 発作は数分以内に止まることが多いのですが、5分以上続くと自然には止まりにくくなります。30分を超えると、脳に重い後遺症が残る場合や亡くなるおそれがあります。

 てんかん重積を起こした子どもには、早期に対応する手段として、保護者や介護者も使える薬が処方されることがあります。

 これまでは座薬だったため、保護者から「発作の最中に寝かせて下着を脱がせるのは大変」「年頃になると、外出先で投与できる場所がすぐには見つからない」との声が上がっていました。

口からシリンジで

子どものてんかん重積…新薬 外出先で簡便に

 2020年11月に発作を抑える抗けいれん薬「ブコラム」が公的医療保険の適用になりました。18歳未満が対象です。

 薬の成分は、シリンジ(注射筒)に入っています。使用する際は、子どもの頬をつまんで広げ、シリンジの先端を頬と歯茎の間に挿入し、ゆっくり全量を注入します。

 保護者らは、主治医から適切な指導を受けた上で、使います。投与は、発作が開始してから5分が目安とされています。その後は、救急搬送の手配が原則、必要となります。

 千葉県に住む根岸聡子さん(33)はドラベ症候群の次女(1)が発作を起こした際、自宅でブコラムを使いました。「使い方は簡便。いつ発作を起こすかわからないので不安でしたが、娘と外出するハードルが下がりました」と喜びます。

 ドラベ症候群患者家族会は、ブコラムの早期承認を目指し、15年から署名活動をしてきました。代表の黒岩ルビーさんは「患者と家族が待ち望んでいた薬。学校や保育施設でも使用が進むよう理解が広がってほしい」と話します。

 この薬は、医療機関でも使われます。昭和大学病院(東京都品川区)てんかん診療センター長の加藤光広さんは「子どもは皮下脂肪が多く、血管は細い。点滴で薬を投与することが難しいケースでも使える」と話します。

 副作用として、呼吸が浅くなったり、一時的に止まったりすることがあります。

 国立病院機構南岡山医療センター(岡山県早島町)の小児神経科医・吉永治美さんは「投与した後も子どもの様子を注意深く観察し、救急隊員や医師に発作の経過を報告してほしい」と話しています。

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