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Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

医療・健康・介護のコラム

「アクアポリン4抗体陽性視神経炎」という難病について…「多発性硬化症」と混同されやすく、実は別の病気

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「アクアポリン4抗体陽性視神経炎」という難病について…「多発性硬化症」と混同されやすく、実は別の病気

 眼球に入力された視覚情報は、眼球の後ろにある視神経を通って脳に伝えられ、脳内で情報処理されて初めて視覚という機能が完結します。もし視神経が病気などで損傷されれば、情報が脳に届かなくなるので見えなくなり、重症なら失明します。

 視神経の病気の代表格は「視神経炎」です。日本では、成人10万人あたり年間2人程度でこの病気にかかるという推計もありますが、片目だけに起きるとは限らず、また再発も珍しいものではありません。

 その中でも「アクアポリン(AQP)4抗体陽性視神経炎」は、両眼視神経に重い炎症をしばしば引き起こし、さらに2年以内の再発が多い病気として、ここ10年ほどは神経眼科領域の最大のトピックの一つになっています。

 アクアポリンとは、細胞膜にある、水を通過させる性質を持つたんぱく質のことです。少々専門的な話になりますが、中枢神経系細胞に多く分布する「アクアポリン4」に対する抗体ができると、結果として神経系が機能不全に陥ります。視神経だけでなく、脊髄や大脳の神経系もダメージを受けやすいので、「視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)」という病気に分類されますが、「アクアポリン4抗体陽性視神経炎」はその代表格といえるのです。従って、これにかかった方は、視神経炎再発のリスクがある上、同時期に、または将来、脊髄炎等も発症する可能性があります。

 視神経脊髄炎スペクトラム障害は、国の難病に以前から指定されている脱髄疾患の「多発性硬化症」に含まれていた概念でした。脱髄疾患は、神経線維を取り囲む (さや) が剥がれて神経伝達が障害される病気のことです。21世紀初頭にこれらの抗体が発見されたことに伴い、メカニズムの研究が日本を中心に急速に進み、多発性硬化症と視神経脊髄炎スペクトラム障害が別々の病気であることが次第に明らかになりました。2015年頃から国際的にもそれがはっきり認識されるようになります。

 逆に言えば、10年以上前に多発性硬化症や急性視神経炎と診断されていたものの一部は、この視神経脊髄炎スペクトラム障害だったわけで、今日の基準に照らせば、適切な治療がなされたとは言いにくい例があったのです。医学は常に進歩の途上にあるのでやむを得ないこととはいえ、患者、主治医双方にとって苦い経験をしたことになります。

 視神経脊髄炎スペクトラム障害については、治療法、とりわけ再発予防に関する治療研究が進み、この1年で様変わりしつつありますので、次回はそれを取り上げます。

 (若倉雅登 井上眼科病院名誉院長)

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若倉雅登(わかくら まさと)

井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。

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