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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

けが防止のために敷いたぬいぐるみで4か月男児が窒息死…転落対策が死亡事故につながることも

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 赤ちゃんを大人用ベッドに寝かせることはよくありますね。「まだ寝返りもしないので大丈夫。ちょっと寝かせておこう」と考えるのです。また、大人用ベッドに寝かせるときには、落ちた時にケガをしないよう、ベッドの下に毛布や座布団を敷いておくなどしていませんか。

 今回は、大人用ベッドからの転落の危険性についてお話ししましょう。前回も示しましたが、6歳以下の子どものベッドからの転落のうち、約6割は大人用ベッドからの転落でした

けが防止のために敷いたぬいぐるみで4か月男児が窒息死…転落対策が死亡事故につながることも

イラスト:高橋まや

壁・窓との隙間に転落 上半身がぬいぐるみに埋もれ…

事例1 :0歳。2016年4月、高さ約55センチの大人用ベッドで親と一緒に寝ていた。転落防止のため、枕で壁を作っていたが、子どもが寝返りをして枕を乗り越え、フローリングの床に転落し、頭蓋骨骨折、急性硬膜外血種で4日間入院。

 これは、典型的な転落例です。一緒に寝ているから大丈夫と思っていると、このようなことが起こります。赤ちゃんを一人で寝かせておいて、転落することもよくあります。「まだほとんど動かないし、寝返りもしないので大丈夫」と思って、大人用のベッドに寝かせておくと、足でシーツを蹴って大人用ベッドの上を移動し、ベッドの端から転落します。寝返りをするようになると、一瞬のすきに転落してしまいます。

事例2 :4か月男児。2016年5月、午後4時ころ、2階の大人用ベッドに寝かせていた。ベッドは高さ50センチ。ベッドから30センチ離れた壁には窓とサッシがあり、その間は、転落した時のけがを防止するためにぬいぐるみやクッションで覆っていた。1時間後に祖母が見に行ったところ、男児はベッドと壁・窓の間に転落し、上半身はぬいぐるみやクッションの中に埋もれ、下半身が出ている状態で窒息、呼吸は停止していた。救急要請され、医療機関に入院したが、18日目に死亡した。

 転落する危険性を十分知っていて、行った対策によって事故死が起こっています。

ベッドガードとベッドの5センチの隙間に挟まれ

事例3 :0歳。2017年9月、転落防止用のベッドガードと大人用ベッドの隙間に挟まれて死亡した。ベッドは、マットレス一体型のベッドで、ベッドガードのネット部とベッドのあいだには約5センチの隙間が空いていた。

 アメリカでは、ベッドガードに関連する事故が132件報告されていて、このうちの13件が死亡事故です。原因ははっきり確認できませんが、保護者が見ていない間に、赤ちゃんが事故にあっています。

 わが国では、製品安全協会から「幼児用ベッドガードの安全基準」が出ており、生後18か月未満には使用しないという表示を義務付けています。消費者庁の報告では「生後18か月未満の乳幼児には絶対に使用しないでください」とも書かれています。

 しかし、長く使う製品ではないため、インターネットで中古品を買うこともあります。使用説明書がついていなかったり、説明書を読まずに使用したりする人も多く、1歳6か月以降しか使えないことを知らない人が多いと思います。

 アメリカでは、ベビーベッドのガードにも新しい基準が検討されているとのことです。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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