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いつか赤ちゃんに会いたいあなたへ

医療・健康・介護のコラム

結婚10年、初めての体外受精で第1子「もっと早く専門病院に行けば良かった」

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近所の産婦人科で毎月人工授精 1年続けても妊娠せず

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 Sさんたちが選んだのは、不妊治療も行っているという近所の産婦人科でした。Sさんはそこでタイミング法を半年ほど、その後、人工授精を約1年間続けたそうです。その病院ではそれ以上の高度治療は行っていなかったので、「言われるままに、毎月治療を続けていくしかなかった」と言います。そして35歳を迎えたとき「このままでは妊娠できないかもしれない…」と、転院を決意。また病院選びの苦労を経て、今度は少し遠かったのですが、不妊治療専門病院に行くことにしました。

不妊治療専門病院に行き、初の体外受精で妊娠

 Sさんたちが驚いたのは、その病院の様々なシステムです。検査も、これまでの検査だけでなく、もっと詳細な検査も行いました。結局これといって不妊の原因が明確にならなかったところで、医師と相談のうえ、人工授精は行わず、体外受精から治療を始めることになりました。「あっという間に検査から治療まで進み、これまでいろいろ躊躇ちゅうちょしていたのはいったい何だったんだろうというぐらいのスピード感でした。でも、検査のことや治療のことなどは、ちゃんと専門の相談士さんから説明を受けてから行う流れだったし、特に不安を感じることはありませんでした」

 そしてSさんは、初めての体外受精で、みごと妊娠! 第1子を授かることができたのです。Sさん夫妻はもちろん、赤ちゃん誕生を待ちわびていた周囲の人は大喜びだったといいます。

結婚10年で出産 「もっと早く専門の病院に行けばよかった」

 「妊娠率は聞いていたので、まさか1回で授かるなんて…。私たちは本当にラッキーだったなと思います。そして、もっと早く専門の病院に行けばよかった、と、何度も思いましたね。時間がもったいなかったなって。私はたまたま今回授かることができたからよかったけど、もっと病院に行くのが遅かったらどうなっていたかわからないし…。だから、病院に行かずに妊活について悩んでいる人がいたら、できるだけ早めに一度は専門病院に行ってみたほうがいい、と言いたいです」

 結婚してから実に10年たってからの妊娠・出産は、本人たちにとっても周囲の人たちにとっても格別なものがあったでしょう。「もう子どもはあきらめていると思われていたみたいで」と、Sさんも苦笑いをしていました。振り返って大変だったのは、「病院選び」と「お金の問題」、そして「仕事との調整」だったといいます。さらに「情報収集」や「周囲とのコミュニケーション」も悩みの種だったそうです。 

 確かに病院選びは不妊治療の大きなカギになってきます。Sさんの場合も、もしはじめから2軒目の病院に行っていた場合、もっと早く授かっていた可能性もあるわけです。女性の妊孕にんよう性を考えると、時間は大変重要な要素です。特に女性が35歳を過ぎたら、少しでも早く最短の道をたどってほしいと思わずにいられません。しかし、だからこそ、その病院選びは至難の業でもあるわけです。

病院選びに役立つ公正な情報公開を

 NPO法人Fineが実施した「どうする?教えて! 病院選びのポイントアンケート2020」(※1)でも、病院選びに「困った」と8割の患者が答えています。また病院を選ぶうえで知りたい情報は「実際の患者の声・評判(口コミ)」(80%)、「治療費用」(74%)、「治療成績」(72%)でした。

 これらの情報につき、口コミはSNSで収集することもできますが、それはあくまでも個人の感じ方や考え方なので、フラットな情報とは言えないかもしれず、それを踏まえておく必要があるかもしれません。治療費用に関しては、HP等に公表しているところもあれば、そうでないところもあります。

 治療成績に関しても同様で、公表しているところとそうでないところがあり、さらにその数字に関する計算方法や条件が一律ではありません。こうした不明瞭なものを明確にするため、不妊治療の負担軽減に関する要望書(※2)もFineから首相官邸に提出しています。Sさんたちのように、病院選びで苦労をし、自分に合った病院を選べず時間を費やしてしまうカップルがこれ以上増えないよう、公正な情報公開が求められています。(松本亜樹子 NPO法人Fine=ファイン=理事長) 

※1「どうする?教えて!病院選びのポイントアンケート2020」結果速報
https://j-fine.jp/prs/prs/fineprs_byoin_anketo2020_sokuho.pdf 

「どうする?教えて!病院選びのポイントアンケート2020」結果 【詳細版】
https://j-fine.jp/prs/prs/fineprs_byoin_anketo2020_shosai.pdf

※2「不妊治療の負担軽減に関する要望書」
https://j-fine.jp/activity/act/yobo_funin20210409.pdf

「追加資料【要望】患者が開示してほしい病院の成績情報」
https://j-fine.jp/activity/act/yobo_funin20210409_2.pdf 

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松本亜樹子(まつもと あきこ)

NPO法人Fine理事長/国際コーチ連盟認定プロフェッショナルサーティファイドコーチ

 長崎市生まれ。不妊経験をきっかけとしてNPO法人Fine(~現在・過去・未来の不妊体験者を支援する会~)を立ち上げ、不妊の環境向上等の自助活動を行なっている。自身は法人の事業に従事しながら、人材育成トレーナー(米国Gallup社認定ストレングス・コーチ、アンガーマネジメントコンサルタント等)、研修講師として活動している。著書に『不妊治療のやめどき』(WAVE出版)など。
Official site:http://coacham.biz/

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