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武井明「思春期外来の窓から」

医療・健康・介護のコラム

不登校から抜け出した高2女子は、なぜ彼にアルバイト代を渡し続けたのか

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 不登校だった子どもたちにとって、異性とのお付き合いはなかなか悩ましい問題のようです。中学校時代に不登校だった女子高校生の事例を通して、思春期の異性関係の難しさを考えてみたいと思います。

言葉通りに受け取ってトラブル

不登校から抜け出した高2女子は、なぜ彼にアルバイト代を渡し続けたのか

 桃子さん(仮名)は、不登校ということで思春期外来を受診した中学生です。

 幼稚園時代の桃子さんは、みんなと同じことをせずに、一人で自分の好きな遊びをしている子でした。小学校入学後、友だちがなかなかできず、同級生から言われたことを言葉通りに受け取ってトラブルになることがありました。

 中学校入学後からは、朝になると頭痛や腹痛を訴えて学校を休むようになりました。そのため、中学1年の6月に、お母さんと一緒に思春期外来を受診しました。

 初診時の桃子さんは、顔つきや態度が年齢よりも幼い感じがする子でした。主治医から質問されても答えることができず、たえずお母さんのほうを見て、答えを求めていました。

 同伴したお母さんは、

 「小さい頃から人付き合いが苦手な子だったので、中学生になってから大丈夫なのかと心配でしかたありませんでした」

 と述べていました。2週間に1度、母親同伴で通院を開始しました。

通信制高校では同級生とよく遊ぶように

 通院が始まって3か月が()ちましたが、桃子さんは不登校のままで、自宅ではゲームに熱中していました。

 6か月が経っても登校できませんでした。今の中学校には通えそうにもないということで、別の中学校にある少人数制の不登校学級に転校することにしました。しかし、そこでも桃子さんは、登校したり休んだりを繰り返していました。

 中学校卒業後、桃子さんは通信制高校に進学し、週3回だけ学校に通うコースを選択しました。

 高校入学後の桃子さんは、

 「毎日、登校しなくてもいいので、中学校時代よりも気持ちはとても楽です。高校の同級生は、私と同じように中学校時代に不登校を経験した子ばかりなので、それなりに仲良くなることができました」

 と述べていました。

 高校入学後の桃子さんはとても活発になり、同級生ともよく遊びに出かけるようになり、さらに、2年生になってからは、ファストフード店でアルバイトを始めるようになりました。当初はとても自信なさげでしたが、何とか続けることができていました。

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武井 明(たけい・あきら)

 1960年、北海道倶知安町生まれ。旭川医科大学大学院修了。精神科医。市立旭川病院精神神経科診療部長。思春期外来を長年にわたって担当。2009年、日本箱庭療法学会河合隼雄賞受賞。著書に「子どもたちのビミョーな本音」「ビミョーな子どもたち 精神科思春期外来」(いずれも日本評論社)など。

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