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スポーツDr.大関のケガを減らして笑顔を増やす

医療・健康・介護のコラム

肘の脱臼は、整復されればいいわけではない

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 「東京2020」が開幕しました。コロナ禍の中で不安な要素もありますが、十分な対策により感染が広がらないことを祈ります。また、日本選手が日々活躍しています。最高の舞台で、最高のパフォーマンスを出せるよう、身体と心を整えて競技に臨んでほしいと思います。

 私は選手村総合診療所で整形外科ドクターとして世界のアスリートを診療しています。すべてのアスリートにとって、東京2020が悔いのない大会になることを願います。

 今回は、肘関節の脱臼を生じた柔道選手の例です。

 Mさんは、社会人で柔道を行っています。取り組みで投げられた際、肘が伸びたまま手をついてしまいました。肘に激烈な痛みが生じ、その後ガクンと関節がはまった感じがありました。痛みは強く、肘を曲げ伸ばしすることができません。やがて腫れも生じてきたため、医療機関を受診しました。

脱臼はどこの関節でも生じうる

 今回は一度肘が脱臼して、すぐに整復されたケースです。肩関節で生じることが多いのですが、脱臼して専門家に整復してもらう必要がある場合と、自然に整復される亜脱臼があります。亜脱臼では、本人が自覚しないケースもあります。

“肘の脱臼は、整復されればいいわけではない” はロックされています。 肘の脱臼は、整復されればいいわけではない

 一般的に、脱臼は骨折よりも軽いけがと認識されているのではないかと思います。脱臼が戻ると、単純X線でも骨としての異常は認められず、その時点で治ったと思われがちです。しかし、それ以上動かない方向に強制的に関節が動いてしまい、適合性がずれてしまうのが脱臼です。関節の可動域を制限している 靭帯(じんたい) や関節包といった組織が、脱臼時には損傷してしまいます。

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 脱臼時に骨折を併発することもありますが、それがなくても、靭帯損傷は必ず生じているため、整復されれば終わり、とはなりません。靭帯が損傷(断裂)すれば、その関節は不安定になるからです。

 典型例として、ジャンプした際の着地などで失敗して、膝が亜脱臼した際に生じる前十字靭帯損傷があります。この場合は自然治癒がほとんど期待できず、切り返しや着地がきちんとできない不安定な膝となってしまったり、軟骨や半月板をさらに損傷してしまう危険もあるため、手術が必要です。

 肩の脱臼では損傷した関節唇と靭帯が自然治癒しづらいため、繰り返して発症するケースも多く、手術が選択されることもあります。

 肘の脱臼では靭帯や関節包を痛めてしまいますが、損傷の程度やスポーツの種目、選手のレベルによって、靭帯を修復する手術を行うかどうかが検討されます。

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大関 信武(おおぜき のぶたけ)

 整形外科専門医・博士(医学)、日本スポーツ協会公認スポーツドクター
 一般社団法人日本スポーツ医学検定機構代表理事

 1976年大阪府生まれ、兵庫県立川西緑台高校卒業。2002年滋賀医科大学卒業、14年横浜市立大学大学院修了。15年より東京医科歯科大学に勤務。野球、空手、ラグビーなどを通じて、野球肘、肩関節脱臼、アキレス (けん) 断裂、骨折多数など自身が多くのケガを経験。スポーツのケガを減らしたいとの思いで、一般社団法人日本スポーツ医学検定機構を設立し、「スポーツ医学検定」を開催している。現在、読売巨人軍チームドクター、栗田工業ウォーターガッシュ、拓殖大学ラグビー部、文京ラグビースクールでメディカル担当。19年ラグビーワールドカップでは選手用医務室ドクター、東京2020オリンピック・パラリンピックでは選手村総合診療所整形外科ドクター。八王子スポーツ整形外科、蓮江病院でも診療。

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