悪性リンパ腫から回復 笠井信輔アナが語るコロナ禍の孤独…「病室にWi-Fiを!」
インタビューズ
悪性リンパ腫から回復 笠井信輔アナが語るコロナ禍の孤独…「病室にWi-Fiを!」
コロナ禍で入院患者への面会が制限される中、病室で孤立し、寂しい思いをしている患者が少なくありません。その時に大きな支えになるのが、スマートフォンなどでの家族や友人とのやりとりや動画などでの気晴らし。ところが、病室で患者がフリーのWi-Fi(無線LAN)を使えるのは、病院の3割程度。中には「病室でのWi-Fi禁止」とするところもあります。医療機器への影響の懸念と導入コストがネックとなっているようです。昨年4月末までの4か月余り、血液のがん「悪性リンパ腫」の治療で入院し、回復したフリーアナウンサーの笠井信輔さん(58)は今年1月、がんの啓蒙活動で知り合った「がん友」ら8人で「#病室WiFi協議会」を結成し、病室へのフリーWi-Fiの普及を目指して活動しています。笠井さんに聞きました。(聞き手・渡辺勝敏)
お見舞いがなくなる。これがどれだけ、孤独なことか
――元フジテレビアナウンサーでフリーになった笠井さんが、社会運動を始めたというので驚きました。がんでの入院経験がきっかけですか。
悪性リンパ腫、しかもステージ4という厳しい状態でがんが見つかって、2019年12月19日に入院しました。医師からは、治療に「早くて4か月、1年かかることもある」と言われる病状でした。抗がん剤治療を繰り返し行うのですが、毎日のようにテレビに出ていた人間が、社会から完全に隔離されてしまったわけです。お見舞いに来てもらえると、本当にうれしかった。ところが、翌20年2月には、新型コロナの影響で家族以外のお見舞いはなくなりました。これがどれだけ、孤独なことか。その時に大きな支えになったのが、インスタグラムでの応答やズームを使ったお見舞い、好きな映画や音楽を楽しむことでした。
――コロナ禍の入院生活で、スマートフォンなどのありがたさが身にしみたということですね。うちの娘も、緊急事態宣言中の昨年4月に出産しましたが、家族を病院に入れてもらえなかったので、スマホの動画で赤ちゃんと対面できて救われました。笠井さんが入院した病院では、フリーWi-Fiを使えたんですか。
いえ、使えませんでした。4か月の入院中、個人で月1万円ぐらいの追加料金を払っていました。病室にフリーWi-Fiがないなんて、入院するまで知りませんでした。フリーアナウンサーとして独立するに当たってインスタグラムを始め、テレビで病気を公表すると、300人だったフォロワーが30万人にまで増えて、こうしたSNSを通して「がん友」が増えて、書き込んでいただいた闘病の体験談は本当に参考になりました。母親は、私のブログを読むことで様子がわかったと言っていました。特に面会に制限があるコロナ禍の入院では、患者も家族もスマホに救われました。患者にとって病室のWi-Fiはライフラインなんです。
――電波環境協議会の今年の調査によると、無線LANは89%の病院で導入されていますが、施設スタッフ用や電子カルテなど医療情報システム用が中心で、患者が使えるようにしているのは31%でした。患者用のフリーWi-Fiがない病院の方が圧倒的に多いわけですね。
そうです。全病室が無料で使えるところもあれば、個人でWi-Fiを契約して使うことを認めているところ、黙認しているところ、「使用禁止」と貼り紙をしている病院もあります。大学病院など差額ベッド代が1日5万円以上の病室に限ってWi-Fiのパスワードを教えるなんてところもあります。つまり院長さんの考えによって、ばらばらなんです。コロナの最中にWi-Fiの使用を禁止するなんて、「孤独に耐えろ」という意味ですよね。それに医療費だけでも大きな負担なのに、Wi-Fiまで契約して出費が増えるのは避けたいという声も聞きました。5万円の差額ベッド代を払える人には有料Wi-Fiなんて負担感はないでしょう。むしろ大部屋にいる人たちこそ使えるようにしていただきたいんです。
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