文字サイズ:
  • 標準
  • 拡大

森本昌宏「痛みの医学事典」

医療・健康・介護のコラム

「指がしびれて動かしにくい」と言う41歳営業マン 原因はスマホに…

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

 Eさん(41歳、男性)は「指がしびれて、動かすことも難しくなってきたんです」として私の外来を受診された。「ふむふむ」、この時点で私の頭にはさまざまな病名が浮かび始めるのである。「う~ん、しびれているのはどの指とどの指ですか?」と質問。その他の情報もパズルのように組み合わせて、徐々に的を絞っていく作業の開始である。

 まず、「 頸椎(けいつい) 症」や「頸椎椎間板ヘルニア」をはじめとする首の骨の異常(首から出て腕に向かう神経がその出口で絞めつけられる)が頭に浮かぶ。続いて、 頸肋(けいろく) (7番目の首の骨に肋骨が存在する)の異常や姿勢の問題などによって、わきの下を走る 腕神経叢(わんしんけいそう) が絞めつけられる「胸郭出口症候群」。 (ひじ) から手に向かって走っている神経の絞めつけによるもの。前回、手首にあるトンネル内での落盤事故として紹介した「 手根管症候群(しゅこんかんしょうこうぐん) 」……などなど、思いつく病気は枚挙にいとまがないので、こりゃたいへんだ。

 ということで、今回はこれらのうち、肘から手(前腕)に走っている神経の絞めつけによる病気、つまりは腕の「 絞扼(こうやく) 性神経障害」(絞扼性ニューロパチー)を取り上げてみよう。読んで字のごとく、末梢の神経が絞めつけられて起こる一連の病気のことである。

「はしを持つ」「ボタンを留める」が難しく

「指がしびれて動かしにくい」と言う41歳営業マン 原因はスマホに…

 さて、腕を走っている神経の本流となっているのは正中神経(指と手首の屈曲運動、小指以外の指の感覚を担っている)、 尺骨(しゃっこつ) 神経(指を閉じたり開いたりする筋肉、薬指の小指側や小指の感覚を担当)、 橈骨(とうこつ) 神経(手の甲側の親指から薬指の親指側の感覚を伝えている)の三つである。これらいずれかの神経が絞めつけられると、その神経が支配している指のしびれや痛みを引き起こすのだ。主に、次の四つのタイプがある。

〈1〉肘部管症候群

  肘部管(ちゅうぶかん) とは、肘の関節の内側にあり、骨、 靭帯(じんたい) 、筋膜に囲まれた空間のことである。肘部管症候群は、肘部管の内側を走っている尺骨神経が、この空間内で絞めつけられることによって起こる。例えば肘を90度曲げると、肘部管の断面積が減少し、尺骨神経が伸びて血流が低下する。これによって薬指と小指、手の甲がしびれるのに加え、はしを持ちにくくなったり、シャツのボタンを留めにくくなったりするのだ。

 別名「携帯電話肘」とも呼ばれるように、スマホでの長時間の通話(その間、肘を90度以上曲げた姿勢になる)が原因となる。営業マンであるEさんの症状は、実は、このスマホの使い過ぎによる肘部管症候群だった。

 約6割の方が痛みを伴うので、発症後早期に、痛みの専門科たるペインクリニックを受診されることも多い。進行すると、薬指と小指が曲がってしまう変形(“ 鷲手(わしで) ”と呼ぶ)を引き起こす。加齢による「変形性肘関節症」や子供の頃の「 外反肘(がいはんちゅう) 」、野球などのスポーツとも関連する。子供の頃の肘の骨折後、10~20年たってまひを起こす「遅発性尺骨神経まひ」もこの仲間である。

1 / 2

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • チェック

morimoto-masahiro

森本 昌宏(もりもと・まさひろ)

 大阪なんばクリニック本部長・痛みの治療センター長。
 1989年、大阪医科大学大学院修了。医学博士。同大学講師などを経て、2010年、近畿大学医学部麻酔科教授。19年4月から現職。日本ペインクリニック学会専門医、名誉会員。日本東洋医学会指導医。著書に『ペインクリニックと東洋医学』『痛いところに手が届く本』ほか多数。現在、大阪市北区の祐斎堂森本クリニックでも診療中。

森本昌宏「痛みの医学事典」の一覧を見る

コメントを書く

※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。

※個人情報は書き込まないでください。

必須(20字以内)
必須(20字以内)
必須 (800字以内)

編集方針について

投稿いただいたコメントは、編集スタッフが拝読したうえで掲載させていただきます。リアルタイムでは掲載されません。 掲載したコメントは読売新聞紙面をはじめ、読売新聞社が発行及び、許諾した印刷物、読売新聞オンライン、携帯電話サービスなどに複製・転載する場合があります。

コメントのタイトル・本文は編集スタッフの判断で修正したり、全部、または一部を非掲載とさせていただく場合もあります。

次のようなコメントは非掲載、または削除とさせていただきます。

  • ブログとの関係が認められない場合
  • 特定の個人、組織を誹謗中傷し、名誉を傷つける内容を含む場合
  • 第三者の著作権などを侵害する内容を含む場合
  • 企業や商品の宣伝、販売促進を主な目的とする場合
  • 選挙運動またはこれらに類似する内容を含む場合
  • 特定の団体を宣伝することを主な目的とする場合
  • 事実に反した情報を公開している場合
  • 公序良俗、法令に反した内容の情報を含む場合
  • 個人情報を書き込んだ場合(たとえ匿名であっても関係者が見れば内容を特定できるような、個人情報=氏名・住所・電話番号・職業・メールアドレスなど=を含みます)
  • メールアドレス、他のサイトへリンクがある場合
  • その他、編集スタッフが不適切と判断した場合

編集方針に同意する方のみ投稿ができます。

以上、あらかじめ、ご了承ください。

最新記事