在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活
医療・健康・介護のコラム
食と健康をめぐる「二つの後悔」
以前、夫とラーメン屋へ行ったときのことです。
ラーメンとギョーザ、チャーハンという、「炭水化物トリプルセット」を注文する他のお客さんを見て、「あんな食生活を続けていたら、いずれ生活習慣病になって心臓病や脳卒中になるかもしれない。あなたはラーメンだけにしておいてね」と夫に忠告したところ、「いや。俺はいつでも好きなものを食べたいね。だって帰り道に交通事故で死ぬかもしれないじゃないか。死ぬ間際に『ああ~、チャーハンも食べておけばよかった』って後悔したくない」と返されました。
なるほど、確かに一理あると思いました。健康を意識するあまり、すべての「楽しみとしての食事」も放棄してしまったら、文字通り、味気ない人生になってしまいそうです。まして、いろいろ我慢したのに、「まったく無関係な原因」で死んでしまったら、あの世で後悔しそうですね。
ピンピンコロリと健康長寿
元気な高齢者の方とお話ししていると、「介護のお世話にならずにピンピンコロリと死にたい」とおっしゃることが圧倒的に多いです。ある在宅医の先生は「ピンピンコロリは突然死です。突然死したいなら、医者にかからないことですよ」と冗談交じりに話していました。高血圧だろうと脂質異常症だろうとお構いなし、たばこやお酒も存分に楽しみ、好きなものを好きなだけ食べて、異常があっても適切な治療を受けなければ、確かに突然死の確率は上がりそうですね。しかし、多くの高齢者は定期的に健診を受け、血圧を下げる薬を欠かさず飲み、体調が悪くなれば入院することもあります。「ピンピンコロリと治療」は共存できるのでしょうか。さまざまな病気を持っていても、しっかりと治療をしながらぎりぎりまで自立して生活し、突然倒れて数日後に亡くなるというシナリオなら、理想的な「ピンコロ」かもしれませんが、なかなか思ったような筋書き通りにはいきません。
高齢者への食生活の調査では、「栄養バランスに配慮した食事」を、ほぼ毎日にわたって1日に2回以上取ると答えた人の割合は、70歳以上の男性で約43%、女性は50%と、他の世代より抜きん出て、高くなっています。約半数の高齢者が健康に配慮した食生活を送っていることがわかります。 1)
私は「健康に長生きしたい」と願う方に「ちょっとぐらい不健康だっていいじゃない。もっと気楽に生きていこうよ」などと言うことはできません。なぜなら、「不健康な食生活」から病気になり、結果的に重い障害が残ったことで、深く後悔している方を見てきたからです。
1 / 2
【関連記事】
※コメントは承認制で、リアルタイムでは掲載されません。
※個人情報は書き込まないでください。