在宅訪問管理栄養士しおじゅんのゆるっと楽しむ健康食生活
医療・健康・介護のコラム
食と健康をめぐる「二つの後悔」
「不摂生は楽しかったけど、後悔している」
比較的、年齢の若い脳卒中後遺症の方への訪問栄養指導をすることがしばしばあります。40代から60代の間に脳卒中になり、治療とリハビリを受けたけれど、 麻痺 が残ってしまった男性に、「発症前はどんな生活をしていたのですか?」と聞いてみました。焼肉やビールが大好きで、居酒屋に行くとジョッキの生ビールをゆうに4杯は飲んでいたこと、毎日煙草をたくさん吸っていたこと、味の濃い外食、脂っこい料理を特に好んで食べ、健康的な食生活とは程遠かったことなどを教えてくれました。
かつての「不健康な生活自慢」をする男性はどこか楽しそうでした。しかし、その一方で「こんな体になっちまって、あの頃の俺に言ってやりたいよ。お前、そのままだと寝たきりになるぞってね。もう少し健康に気をつければよかったと後悔している」ともおっしゃるのです。
生活習慣が原因と考えられる病気になると、多くの人は「あのとき、もっとこうしていたら違った未来になっていたかも」と考えます。必ずしも病気と食生活との因果関係は断言できるわけではなく、食生活に気をつけていても病気になることもありますが、それまでの食生活に「うしろめたさ」があれば、自分を責めることになるわけです。
「好きに食べておけばよかった」と「節制すればよかった」の狭間で
健康的な食生活を意識することなく、好き勝手に食べていても、病気になれば後悔するかもしれませんし、節制しすぎたらあの世で後悔するかもしれません。たとえば、「がんの予防には〇〇が効く」という根拠のない食事療法を信じ、おいしくなくても我慢して〇〇を食べていたのに、がんを患ってしまったら、「〇〇を食べていたのに、こんなことになるのなら、好きなものを好きなだけ食べていればよかった」と後悔するでしょう。根拠のない食事療法は、お金や時間がムダになるだけでなく、その方の人生の質において大切な意味を持つ食生活までも損なってしまうことがあるのです。
大切なのは「ほどほどに健康的においしく食べること」ではないかと思います。
「もっと食べたいな」「もっとお酒を飲みたいな」と思ったときに、未来の自分に思いをはせ、その食生活を重ねた先でなるべく後悔しないよう、「ほどほど」を心がけてみてはいかがでしょうか。私もビールが大好きですが、「もう1杯飲みたいな」と思うところでやめて、冷たい水を飲むようにしています。「続きはまた明日にしよう。未来の私がおいしくビールを飲むために」と言い聞かせるのです。
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