Dr.高野の「腫瘍内科医になんでも聞いてみよう」
医療・健康・介護のコラム
私が通う病院には腫瘍内科医がいません。どうしたらいいですか?
腫瘍内科とは、「がんを診る内科」です。外科医が手術を行い、放射線科医が放射線治療を行うのに対して、腫瘍内科医は、抗がん剤、ホルモン療法、分子標的治療、免疫療法などの「がん薬物療法」を担当します。がん薬物療法は日々進歩し、様々な薬が使われるようになっていて、それとともに副作用管理も複雑になっていますので、薬物療法を専門とする腫瘍内科医が担うのが理想です。

イラスト:さかいゆは
納得できる治療を受けられているかが重要
でも、がん治療を受けている方で、腫瘍内科医にかかっているケースは、必ずしも多くありません。現在、日本臨床腫瘍学会が、腫瘍内科の専門医である「がん薬物療法専門医」の認定を行っていますが、2021年7月現在の専門医数は、全国で1530人です。年間約100万人が新たにがんと診断され、年間約38万人ががんで亡くなっている中、それに対応すべき腫瘍内科医が1530人しかいないというのは、まだまだ不足していると言わざるをえません。
腫瘍内科医が不足している中で、がん薬物療法を担当しているのは、主に、外科系の医師です。もともと日本では、外科系の医師ががん診療全般を担ってきた歴史があり、一人の担当医が、診断から、手術、がん薬物療法、緩和ケアまで、すべてを担うことは珍しいことではありません。このコラムを読んでくださっている患者さんの中にも、外科系の医師のもとでがん薬物療法を受けているという方は多くおられると思います。
腫瘍内科医がいて、がん薬物療法を担当してくれるのが理想ではありますが、腫瘍内科医がいるかどうかよりも、きちんとコミュニケーションがとれて、治療目標を共有できていて、納得できる治療を受けられていることの方が重要です。腫瘍内科医がいなかったとしても、担当医から十分な説明があり、納得して治療を受けていて、困ったことに適切に対応してもらえているのであれば、そのまま治療を受けていて問題ありません。
セカンドオピニオンを腫瘍内科医に求める方法も
日本では、診断からずっと一人の医師が担当し続けてくれることに安心感を抱く患者さんも多く、このスタイルが日本の医療の特徴でもありました。外科系の医師のオールマイティーな能力が、日本のがん医療を支えてきたとも言えます。
ただ、がん薬物療法が進歩し、多様になる中で、外科系の医師が手術の合間に薬物療法も手がけることは、容易ではなくなってきました。これからの時代は、「外科系の医師には手術に専念してもらい、腫瘍内科医が薬物療法を担う」という役割分担をする方が、より適切ながん医療ができるはずです。
もし、納得できる説明が受けられなかったり、治療に不安を感じていたりして、腫瘍内科医の意見を聞きたいということであれば、近隣の病院にいる腫瘍内科医を調べて、セカンドオピニオンなどの形で意見を求めてみるという方法もあります。がん薬物療法専門医のリストは、 日本臨床腫瘍学会のホームページ で公開されていますので、ご確認ください。最近は、直接、病院を受診することなく、インターネットを用いてオンラインでのセカンドオピニオンを行っている病院もありますので、近隣でなくても、セカンドオピニオン受診は可能です。
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