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粘り気強い鼻水が…治療難しい好酸球性副鼻腔炎 鼻茸切除とステロイドで症状コントロール

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 鼻の中に「 鼻茸はなだけ 」と呼ばれるポリープができる慢性 副鼻腔炎ふくびくうえん があります。その中でも治療が難しいのが「好酸球性副鼻腔炎」で、中等症以上は国の難病に指定されています。ただ、治療法は年々進歩し、病気をうまくコントロールできるケースが増えてきました。(西原和紀)

鼻づまりや鼻水

好酸球性副鼻腔炎…鼻にポリープ 嗅覚障害

 副鼻腔は、吸った空気が通る「鼻腔」の周囲にある空洞です。好酸球性副鼻腔炎は、空洞内の粘膜が腫れたり、鼻茸ができたりします。その粘膜や鼻茸に、白血球の一種である「好酸球」という免疫細胞が数多く見られます。この病気の原因は、はっきりと分かっていません。

 国内の副鼻腔炎患者は100万~200万人と推計されています。鼻づまりや鼻水が3か月以上続くと、慢性副鼻腔炎と診断されます。このうち、難病に指定されている好酸球性副鼻腔炎の中等症と重症は約2万人とされ、増加傾向にあります。20歳以上が大半で、子どもが発症するケースはほぼありません。

 好酸球性副鼻腔炎の主な症状は、鼻づまりや粘り気の強い鼻水などです。においが分かりにくくなる「嗅覚障害」が出ることも大きな特徴です。鼻茸によって、においの成分が鼻の奥まで届かなくなったり、においを感じる部分にも炎症が広がったりするためです。気管支ぜんそくや、治りにくい中耳炎を併発するケースもあります。

 診断には、鼻の中を診る検査や血液検査、コンピューター断層撮影法(CT)による画像検査を実施します。鼻茸などの一部を切り取って調べ、確定診断をします。ぜんそくの有無や、血液中に含まれる好酸球の割合などで、重症度を判定します。

切除後、洗浄・投薬

好酸球性副鼻腔炎…鼻にポリープ 嗅覚障害

 確立された治療法はありませんが、炎症を抑えるステロイドの服用が有効です。ただ、副作用があるため長い期間は使いにくく、注意が必要です。鼻茸を取り除く内視鏡手術もありますが、すぐに再発してしまいます。

 最近は、内視鏡手術で鼻茸を切除するなどした後、ステロイドを投与したり鼻を洗浄したりすると、再発せずに済むケースが増えることが分かってきました。

 手術の際に、副鼻腔の中を仕切っている薄い骨を取り除き、鼻の奥まで洗浄できるようにします。ステロイドの点鼻薬などによる治療効果も上がり、患者の8割程度は症状をコントロールできるようになってきました。

注射薬の治療法も

 アトピー性皮膚炎などに使われている注射薬を用いた新しい治療法も実施されています。鼻茸が小さくなったり、鼻づまりなどの症状が改善したりする効果があります。持病があるなど、手術が難しいケースなどに、この薬の使用を検討します。公的医療保険の対象となるのは、手術後に再発した患者などに限られます。

 好酸球性副鼻腔炎は、風邪などをきっかけに悪化することも多いです。日常生活では、手洗いの徹底など、感染症を予防する基本的な対策が大切です。

 大阪大助教(耳鼻咽喉科・ 頭頸とうけい 部外科)の前田陽平さんは、「嗅覚障害の症状が出てから長期間放置してしまうと、手術しても元に戻りにくくなります。鼻づまりや嗅覚障害が続く場合は、耳鼻科医に相談してください」と話しています。

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