Dr.三島の「眠ってトクする最新科学」
医療・健康・介護のコラム
いよいよ五輪開幕。でも、多くのアスリートに睡眠の問題が
こんにちは。精神科医で睡眠専門医の三島和夫です。睡眠と健康に関する皆さんからのご質問に、科学的見地からビシバシお答えします。
いよいよ東京オリンピックの開催です。新型コロナウイルス感染症の感染拡大のために1都3県の会場での無観客開催が決定されるなど、何もかもが異例ずくめとなってしまいましたが、この大会のために努力を続けてきたアスリートの皆さんの活躍を期待したいと思います。今回はアスリートの睡眠についてご紹介します。
睡眠負債が身体能力を低下させる
心身の健康を保つために睡眠が重要であることは、このコラムでも繰り返し述べてきましたが、もちろんアスリートにとっても大きな関心事になります。一流のスポーツ選手が「お気に入りの枕やマットレスを遠征先に持参している」「温浴、冷浴、人工炭酸泉などこだわりの入浴法を行っている」などという話をお聞きになったことがあるのではないでしょうか。驚異的な身体能力を発揮しなければならないからこそ、睡眠の大事さを肌で実感している選手が多いのかもしれません。
実際、スポーツ医学研究からも、アスリートが競技パフォーマンスを十分に発揮するためには質の良い睡眠を十分に確保することが重要であることが明らかになっています。例えば、睡眠不足(睡眠負債)があると、筋力、有酸素運動能力、ランニング能力、認知機能や刺激に対する反射能力など、さまざまな身体機能が低下することが運動生理学研究によって明らかになっています。これらの身体機能は多くの競技に共通して求められる能力です。
SNSへの投稿がパフォーマンスに
SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)の使用時間と競技パフォーマンスとの関連を調べた興味深い研究があります。米プロバスケットボール協会(NBA)の選手112 名を対象にした調査したところ、夜23時から翌朝7時までの深夜時間帯にTwitterへ投稿した選手は、翌日の1試合での平均得点、リバウンド数、シュート率が、投稿しなかった翌日に比べて低かったそうです。選手たちはものすごい数のSNSへの投稿を行っていて、練習が終わった後の深夜にそれを行うことが睡眠不足、ひいてはパフォーマンス低下の原因だと結論づけられました。そんなことまでチェックされるなんて、プロは大変ですね。
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