宋美玄のわーままクリニック
妊娠・育児・性の悩み
学校は「産む機械」の工場? 健診で不妊予防の気持ち悪さ
7月10日の読売新聞で「 不妊予防へ支援強化 厚労省…学校健診に項目追加 」と伝えられました。記事によると、20~30代の女性約800万人が月経痛に苦しんでいて、子宮内膜症や子宮筋腫が原因となっていることもあり、早期発見や重症化予防のために学校健診で月経痛のある生徒を拾い上げ、産婦人科につなぐ取り組みをすると厚生労働省が発表したとのことです。また、養護教諭や産業医らに女性の健康課題についての知識を強化する研修を行い、生涯にわたる女性の健康を包括的に支援するとのことです。
女性の不調について知るのは素晴らしいが…
いやー、とても素晴らしいことです。月経困難症(生理痛)や月経前症候群(PMS。生理前の不調)、過多月経(生理の出血が多いこと)には、多くの女性が悩まされています。特に初経が来たばかりの小、中、高校生には、自分の月経が正常範囲なのかどうかも分からなかったり、相談できる相手がいなかったりして、月経周期に伴う不調を「こんなものなのかな」と思って生活している方が数多くおられます。月経が、部活の試合や期末試験に重なったら困る……などと、生活への支障を感じている人も多いです。社会人になっても、月経が重くて欠勤したり、PMSのせいで仕事に力が発揮できなかったり、という患者さんも、産婦人科を多数受診されます。思春期の頃に、学校で女性特有の不調についてしっかりとした知識を得る機会があるというのは本当に素晴らしいことです。
しかし、このニュースには「不妊予防」という違和感のある言葉が付いていました。厚労省が学校健診で月経痛の子供をすくい上げ、医療機関の受診につなげる理由は、「月経痛の裏には、不妊の原因となる子宮内膜症や子宮筋腫が隠れていることがあり、それらを早期発見して、重症化を予防し、将来の不妊を予防するため」ということなのです。
そう言われると、「女性特有の健康課題について知ってもらって診療につなぎ、痛みなどの不調を改善して健康で快適な人生を送ってもらおう」というのが目的ではなく、学生のうちから、「将来、子を産む能力に支障が出ないようにチェックするのが最終目的」ということなのね、と受け取れます。これではまるで、学校は「産む機械」の工場ですよね。実際このニュースが流れたあと、多くの女性から反発する声が上がりました。当然の反応だと思います。
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産みたくても産めないつらさを抱える女性を減らしたい。そんな思いから不妊につながる疾患への理解を若年層へ啓発しているのではないでしょうか? 産むための工場なんてひどい考えで、この様な施策をしているのでしょうか? 私は、子を産み育てる幸せを求める女性が、将来、つらい思いをすることのないように、少しでも周知され、医療につなげる機会を教えてくれているように思います。
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