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消えゆく給食の瓶牛乳、風前のともしび…全国8割超が紙パック

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 友達と早飲み競争をしたり、集めたキャップ(ふた)をメンコ代わりにして遊んだり。中高年以上の世代にはなじみ深い瓶入り牛乳が、学校給食から姿を消しつつある。兵庫県では昨年9月に全て紙パックに切り替わり、大阪府でも今年度で瓶はなくなる予定だ。乳業メーカーの事業縮小や製造設備の老朽化の影響で、全国では既に8割超が紙パックに。環境への配慮から瓶を復活させた例もあるが、「脱瓶」の流れは変わりそうにない。(浅野友美)

消えゆく給食の瓶牛乳、風前のともしび…全国8割超が紙パック

昔懐かしい牛乳瓶

80年代に逆転

 農林水産省などによると、給食用牛乳の容器は1970年度には89%が瓶だった。しかし、乳業メーカーが本格的に紙パック牛乳の製造を始めて以降、給食でも普及し、80年代に逆転。2019年度は紙パックが85%、瓶は15%になった。すでに給食から瓶牛乳が姿を消したのは、19年度で北海道や京都など27道府県に上る。

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 瓶牛乳が比較的多かった大阪府内でも紙パックへの切り替えが進み、吹田市や八尾市など残る13市町も、今年度末で瓶が姿を消す。

 和泉市では、給食で瓶牛乳が出るのは1学期が最後。5年生の男児(10)は「瓶でも紙パックでも容器は気にならない。でも、瓶の方が冷たくておいしく感じる」と話した。

使い回し懸念も

 瓶は、洗えば何度も使えるが、洗浄や殺菌に費用がかかり、割れる危険性に加え、重さから配送コストもかさむ。

 少子化による市場の変化もある。学校給食用牛乳の製造工場は06年に257あったが、市場の縮小で19年には194に減少。特に中小メーカーは、工場の稼働率が低くなり収益が悪化し、製造設備の更新ができずに学校給食から撤退したり、製造をやめたりする事業者も相次いでいる。さらに新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、学校現場からは瓶の「使い回し」を懸念する声も上がった。

 兵庫県尼崎市は県内で最後まで瓶だったが、昨春、コロナによる休校で供給元の売り上げが減少。稼働を止めた製造ラインが故障して、製造継続が難しくなったため、昨年9月から紙パックに切り替えた。

一部で復活

 一部では、瓶牛乳を復活させる動きもある。紙パックの牛乳で使うストローはプラスチック製で、海に排出されれば細かい「マイクロプラスチック」になって生態系に悪影響を及ぼす懸念があるからだ。

 05年度から紙パックを使っていた東京都多摩市は、20年6月から瓶牛乳に変更。都内の稲城市や青梅市も同月以降に瓶を復活させた。

 また、ストローが不要の紙パックも誕生している。給食用牛乳パックの国内占有率が5割に上る日本製紙(東京)は、一部を指で押すと飲み口が大きく開くパックを開発。今年1月から高知県内の学校給食で採用されており、同社は全国の乳業メーカーや教育委員会に導入を働きかけている。

1928年に現在の形状に

 日本乳業協会によると、牛乳は明治初期にブリキ缶で販売され始め、明治21年(1888年)に東京の牛乳店でガラス瓶が扱われるようになった。1928年に安全性確保のため、無色透明の広口瓶で紙栓をするように取り決められ、現在の瓶の形になったという。

 瓶牛乳は減少傾向にあり、農林水産省の統計では、2020年10月の牛乳生産量は、瓶が9980キロ・リットルと、紙パック(24万9049キロ・リットル)の約4%にとどまる。

 学校給食では1946年から子供の栄養摂取のために脱脂粉乳の提供が始まり、58年から瓶牛乳の提供がスタート。学校給食法の施行規則は、主食に牛乳やおかずがついた給食を「完全給食」と定め、牛乳の提供が給食の前提となっている。

 米国の給食では、学校側が用意した複数種類の牛乳から選べる。2012年には肥満防止のために低脂肪や脂肪分ゼロの牛乳に限定されたが、18年からは甘味をつけた乳飲料も加わるなど、緩和された。欧州でも欧州連合(EU)が加盟国での学校給食に牛乳を供給する助成制度がある。

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