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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

財布を出そうと前かがみ 抱っこひもから赤ちゃん転落…外傷性くも膜下出血で救急搬送

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5人に1人が事故やヒヤリハットを経験

 2015年2月、経済産業省のサポートを受け、33のメーカーや輸入代理店が中心となり、 抱っこひも使用時の安全や製品安全基準などについて検討する協議会 が設立されました。17年から1年に1回、抱っこひもの使用状況や使用経験から、事故またはヒヤリハット事例を収集しています。そのデータは会員各社に提供され、製品改善、取扱説明書の改善、安全のための啓発活動に活用されています。 20年12月から21年1月までに行われた調査結果 によると、約5人に1人がヒヤリハットの経験や事故を経験していました。転落が76%、足や手の圧迫が11%で、事故の発生状況も詳しく分類されていますが、前年とほぼ同じ結果となっていました。

 アンケートに協力した人のデータであるという前提で見なければいけませんが、直近の抱っこひも等の使用状況、危険を感じたケースなどの情報が得られ、これらを検討すれば短期間に製品開発に活かすことが可能となります。一企業だけでなく、業界としてこのような活動を継続して行っていることは、子どもの傷害を予防するための活動のモデルの一つになると思います。この情報と、日本小児科学会のInjury Alert(傷害速報)のデータ、消防庁の救急搬送データなどを組み合わせ、予防策を検討していくことが必要です。

まだ改善の余地が多い製品

 東京都生活文化局の報告書には、総合的な対策が詳しく述べられていますが、保護者の方は、次のことに注意が必要です。

  • 抱っこひも等を使用する前に、動画を見て、取り扱い方法や装着法を学ぶ。
  • 抱っこひも、おんぶひもに子どもを乗せたり、降ろしたりする場合は、座ったり、しゃがんだ状態で行う。
  • 座ったり、しゃがんだりできない場合は、畳や布団の上など床面が軟らかい場所で行う。
  • サイズ調整を頻回に行い、装着がしっかりできているかを必ず確認する。
  • 前かがみになっても転落しづらい製品もあるので、そういう製品を使用する。

 東京都は、 抱っこひもを使用するときの注意点のリーフレット を作っています。

 抱っこひもは、子育てに必要不可欠な育児用品ですが、製品としてはまだ改善の余地が多い製品です。メーカーの取扱説明書には、使用上の注意がこと細かく記載されていますが、それを読む人はほとんどいないと思います。メーカーは、抱っこひもを使用中は「前かがみの姿勢をとらないように」と言っていますが、実生活の場では、落ちたものを拾う動作は必ず発生します。現時点の抱っこひも等の製品では「使用時に子どもが転落する可能性がある」ということを、保護者は知っておく必要があります。(山中龍宏 緑園こどもクリニック院長)

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。キッズデザイン賞副審査委員長、こども家庭庁教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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