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山中龍宏「子どもを守る」

医療・健康・介護のコラム

財布を出そうと前かがみ 抱っこひもから赤ちゃん転落…外傷性くも膜下出血で救急搬送

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財布を出そうと前かがみ 抱っこひもから赤ちゃん転落…外傷性くも膜下出血で救急搬送

イラスト:高橋まや

 抱っこひもは、赤ちゃんの体をベルト等で保持する製品で、保護者は肩ベルトや腰ベルトでそれを装着します。幅広の布を保護者がたすき掛けにし、布の柔らかくてたわんだ部分で子どもを保持するスリングというものもあります。抱っこひもには、赤ちゃんを横にして抱く「ヨコ抱っこ」、保護者と向き合う「縦対面抱っこ」、赤ちゃんの背中を保護者の胸に当てた「前向き抱っこ」、おんぶ、ななめに抱く「腰抱っこ」などの使い方があります。

 抱っこひも等からの乳児の転落は多発しており、入院する例もあります。東京都生活文化局から2014年12月に「 抱っこひも等の安全対策 」という詳細な報告書が出ています。今回は、この報告書を中心にお話しします。

  事例 :4か月男児。2013年3月、抱っこひもを使い、子どもを対面で固定している状態で、バスの券売機で券を購入しようと、70~80センチ程度の高さの台にカバンを置いた。カバンから財布を出そうと少し前かがみになったとき、抱っこひもの右脇から子どもが滑るように出て、頭部を下にしてコンクリートの地面に転落してしまった。抱っこひものベルトはすべて締めていた。ふだんはダウン着の上から装着していたが、その日はダウン着を着ていなかった。すぐに空港職員に声をかけて救急要請をしてもらい、外傷性くも膜下出血のため5日間入院した。

大人が立った状態から転落 衝撃大きく

 都の調査では、2009年以降に起きた抱っこひも等からの転落の事例を117件把握しています。そのうち入院を要した例は27件で、受傷部位は頭部が大半を占めていました。月齢は12か月未満が多く、入院を要したのは4か月以下に集中していました。転落時の高さをみると、入院を要する事例の8割は90センチ以上でした。いろいろな対策が行われていますが、入院を要する転落例は起こり続けています。( 2020年3月8月8月9月10月

 4か月未満の子どもの転落例は、「前かがみになった」「上の子を抱き上げようとした」「保護者がつまずいた」といった時に起きているのに加え、ひもがゆるい状態で装着されていて子どもがすり抜けたり、留め具を調整中に転落したりしていました。抱っこひもと保護者の体の間に隙間が生じ、脇から子どもがすり抜けて転落するケースも多くみられます。

 4か月以上では、おんぶに関する事例が過半数を占めています。おんぶする時に子どもが動いたり、暴れたりして転落する事例が多くなっていました。

 抱っこひもに慣れていない人が使っていて、「バックルの一部を留め忘れた」「二人がかりで装着しているとき、お互いに相手が支えていると思い込んで子どもを落としそうになった」などの事例もあります。

 大人は立ったままの状態で、抱っこひもに子どもを乗せたり、降ろそうとしたりして事故が起きる場合が多いため、転落時の衝撃が大きくなります。また、頭から転落することが多いので、頭に重篤なけがを負う可能性が高くなります。

 スリングからの転落では、「スリングに入れようとしたが、袋状になっているところに納まらず、スリングと保護者の隙間から転落」「階段を下りている際に少しずつずれて、お尻の支えが浅くなった。それを直そうとした際に、お尻が滑って転落」「抱っこからスリングに入れようとしたところ、子どもの足が引っかかってうまく入らず、保護者の前方向に頭より転落」などの事故が起きています。

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山中 龍宏(やまなか・たつひろ)

 小児科医歴45年。1985年9月、プールの排水口に吸い込まれた中学2年女児を看取みとったことから事故予防に取り組み始めた。現在、緑園こどもクリニック(横浜市泉区)院長。NPO法人Safe Kids Japan理事長。産業技術総合研究所人工知能研究センター外来研究員、キッズデザイン賞副審査委員長、内閣府教育・保育施設等における重大事故防止策を考える有識者会議委員も務める。

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