子どもの健康を考える「子なび」
医療・健康・介護のコラム
口の中の健康(4)糖分控え歯磨きしたのに…なぜ前歯にむし歯? 原因はスポーツ時のイオン飲料に
このシリーズでは、大阪大の仲野和彦教授に聞きます。(聞き手・村上和史)
気温が上がり、子どもにスポーツドリンクや経口補水液といった「イオン飲料」を与える機会が増えています。体に良いイメージばかりが先行しがちですが、むし歯の原因にもなり得るということは忘れないでください。
ある日、複数の前歯にむし歯ができた男児(8)が来院しました。親によると、糖分を控え、歯磨きにも気をつけていたため、それまではむし歯がなかったそうです。何がいけなかったのでしょうか。男児がスポーツに熱心に取り組んでいれば、小児歯科医は1日に何度もイオン飲料を飲んでいたことを疑います。
イオン飲料は一般的に、下痢や 嘔吐 を繰り返して速やかな水分補給が必要な時によく飲まれています。汗をたくさんかく運動などに備え、ペットボトル入りのイオン飲料を持ち歩かせる場合もあるでしょう。実は、ここに落とし穴があります。
イオン飲料は、含まれる塩分により甘さが控えめのように感じられがちです。しかし、糖分はしっかりと含まれていますし、喉が渇いて必要以上に飲んでしまうこともあります。水素イオン指数(pH)は3・6~4・6程度で、歯の表面のエナメル質が溶け始めるとされる5・4を下回ります。
イオン飲料によるむし歯は、ジュースや炭酸飲料によるものと同様、通常はなりにくい前歯にもできます。寝る直前や夜中は控えていただきたいのですが、飲んだ場合はしっかり歯を磨きましょう。
成長に伴い、塾帰りなど親の目が届かないところで飲み物を買う場面は増えていきます。幼い頃から糖分の入った飲み物は避け、水やお茶を飲む習慣を付けさせることが重要です。
【略歴】
仲野和彦(なかの・かずひこ) 日本小児歯科学会専門医指導医。大阪大卒。阪大准教授を経て2014年から現職。博士(歯学)。
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