がんのサポーティブケア
医療・健康・介護のコラム
がんのサバイバーシップとは 診断された時から亡くなるまで 中長期の合併症のフォローや就労支援も がん患者の日常を支える
がん専門医とプライマリケア医が連携
――がんサバイバーシップに関わる課題は幅広いですね。
長期・晩期の合併症対策といった医学的なテーマがまず挙げられます。それだけでなく、長期的なフォローアップなど公衆衛生やプライマリケアが関わる分野もあります。さらには、健康格差や就労、経済的困難、家族関係、恋愛・結婚など、生活全体や社会のしくみが関わるテーマもあります。
長期的なフォローアップや晩期合併症の問題は、患者さんが長生きできるようになった今、急いで対応しなければならないテーマです。また、がんになった後の食べ方や身体活動など健康増進についてのエビデンスを早く出すことも重要です。
――がん専門医とプライマリケア医の連携も、これからの課題に挙げていらっしゃいますね。
全国で毎年100万人ががんになる時代です。がん専門医は治療に注力するのが本来の役割ですし、増え続ける患者さんのその後をすべてフォローする余裕はないでしょう。近年、がん患者の長期フォローアップを、地域のプライマリケア医と連携する動きが生まれ、これは世界的な動きでもあります。
どのような連携のしくみが効果的なのかは、東京のような都市部と地方では事情が異なると思います。国立がん研究センターの研究班でも検討を進めているところです。
がんサバイバーの疾病予防 エビデンス作りが必要
――がん医療の進歩によって生存率が向上した反面、新たな課題が生まれているということでしょうか。
がん治療による合併症は、場合によっては何年も続くこともあります。さらに、治療が終わってから何年もあとに出る晩期合併症もあります。これら長期・晩期合併症への対応は、がんになっても長生きできるようになったからこそ浮上してきた課題と言えます。また、がん治療が認知機能に及ぼす影響も注目されています。
長期・晩期合併症が特に課題になるのは、高齢者よりも、小児期やAYA世代にがん治療を受けたサバイバーです。抗がん剤などの強力な治療を受けてがんが治っても、その先の人生が長いからです。これからデータを積み重ねる必要があります。
――がんサバイバーの予防のエビデンスが不足しているというのは、どういうことですか?
がん経験のない一般人のエビデンスはあっても、がん患者さんに関するデータは足りません。がんになった後の健康づくりの研究が重要になってきています。
たとえば、乳がんなど一部のがん種では、よくからだを動かすがんサバイバーのほうががんで死亡する可能性が低いという結果が出ています。サバイバー向けの運動プログラムも開発されています。今後、研究の発展が期待される領域です。
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